欧州連合(EU)各国と欧州議会は13日までに、EU域内で販売されるスマートフォンやタブレット端末など電子機器の充電器の端子を「USBタイプC」に統一する方針で大筋合意した。欧州議会と理事会の承認を経て、2024年秋にも実施する見通し。米アップルはスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」などでUSBタイプCとは異なる規格の端子を採用しており、今後変更を迫られそうだ。(ロンドン=板東和正、高木克聡)
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今回の合意は、消費者の利便性向上や、不要な充電器が廃棄されて生じる「電子ごみ」を削減することが狙いだ。EUのブルトン欧州委員は、合意によってEUの消費者は年間2億5千万ユーロ(約350億円)程度を節約できるようになると予測している。
デジタルカメラやヘッドホン、ポータブルスピーカー、ゲーム機なども対象に含まれるが、ノートパソコンにはさらに猶予期間を設ける見通し。アップルがアイフォーンなどで採用する「ライトニング」端子は事実上、排除される。今回の合意はEU内で効力を発揮するが、日本を含む他の地域でも今後標準となる可能性が指摘されている。
ロイター通信などによると、アイフォーンなどの利用者から異なる充電器を使わなければならないとの苦情があったため、EU欧州委は10年以上にわたり端子の共通化を推進してきた。
田中理・第一生命経済研究所主席エコノミストは「EUは常にアップルやグーグルなどの米巨大IT企業への規制を強化している」とした上で「今回も利用者の利便性や環境問題の観点でアップルなどに対して強い姿勢で対応する方針を示し、過度な優位性をもたせないようにした可能性がある」とみる。
ただ、米CNNテレビなどの情報では、端子の統一について審議が行われていた際、アップル側はEU当局者に対して、今回の合意が実施されれば、ライトニングを採用した最大10億台の端末などが役にたたなくなると訴えていた。今回の合意が実施されれば、使用できなくなるアップルの端末が大量に発生し、逆に新たな環境汚染を引き起こす恐れもある。
安価品購入には注意必要
EU各国が大筋合意したスマートフォンやタブレット端末などの充電端子の規格統一は消費者にとって複数の周辺機器を買いそろえる必要がなくなるなどの利点が多い。一方、統一規格のUSBタイプCはさまざまな機能を持っており、使いこなすには知識が必要だ。充電ケーブルなどを製造するメーカーからは品質による差別化などで商機が生まれるとの期待の声も上がる。
充電端子の規格の統一で最も恩恵を受けるのが消費者だ。スマホやタブレット端末で高速充電などが可能なタイプCが広がる中、異なる端子を採用している米アップルのアイフォーン・ユーザーはこれとは別の充電ケーブルを用意しなければならなかった。
タイプCは充電やデータの入出力のほか、映像出力もできるなど、多様な用途が可能で、利便性も高まる。ただ、安価な製品を購入する場合には、一部の機能には対応していないなど、思わぬ落とし穴に注意が必要だ。
周辺機器メーカーのバッファロー(名古屋市中区)は「(規格統一で)市場は縮小する可能性があるものの、(差別化のため)より高品質な製品が求められるようになる」と指摘。スマホの充電ケーブルの製造を受託するある中小企業の担当者は「アップル向けの製品はライセンス料でコストが見合わず数年前に製造をやめているので(規格統一による)影響はない」と話した。