出生数80万人割れ目前 子供を育てる高いハードルと遅すぎる制度構築

    厚生労働省が発表した合計特殊出生率は1.30と減少、出生数は81万人となりました。最近では、テスラ社のイーロン・マスク氏が「少子化で日本が消滅する」と発言し話題となりました。東北大学経済学研究科内高齢経済社会研究センターの子供人口時計では、2966年ころには日本から子供(0-14歳)が居なくなると計算しています。

    ※画像はイメージです(GettyImages)
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    FPが感じる少子化克服のカギ

    筆者がファイナンシャルプランナーの立場でお金の相談を受けていると、お金以前に「そもそも国の制度周知や企業の取り組み姿勢に問題がある」と感じることが少なくありません。お金の問題に集約されがちな子育てと少子化について、筆者が感じることは下記となります。

    義務教育で子育ての学びを増やせないのか

    初めて子供を授かると、手探りの状況から子育てが始まります。子供を育てた経験がないまま親になるべきでしょうか。議論の余地はありますが、少なくとも準備期間は必要ではないでしょうか。学校で金銭教育を始める以前に、家庭や社会で子供を育てることを学ぶ時間を設ける必要があると感じます。特に、男性に対する子育て教育は必須と感じます。

    企業内の慣習を変えるべく支援組織を行政で立ち上げる

    人員にゆとりのある大企業を除けば、子育てを理由とした勤務スケジュールの変更に対応すると、他の社員の負担が重くなります。子育てで親が働き方を変えるのに職場が対応すべきと考えている人や組織はまだまだ少ない印象です。

    休む権利を活用できない職場に対し、従業員側から働きかけて就労環境を改善することを支援する組織が必要ではないでしょうか。例えば、労基署に相談すると直ちに子育て支援の指導が入るようになれば、企業側も変わらざるを得ないでしょう。日本は社会保障が手厚いわりに、利用できていない家庭が多いのではないでしょうか。

    子育て中の所得補償を充実させる

    産後であれば、勤務先の社会保険料負担のない育児休業給付を受け取りながら、会社に籍を置き続けることができます。例えば、時短勤務を制度化し、時短勤務期間中の収入源を補填する制度があれば、収入を減らさずに子供の発達段階に合わせて働き方をコントロールできるでしょう。

    大学、専門学校を含めて自立するまでの子育て費用を無償化する

    幼児教育の無償化がスタートしていますが、0-2歳児童に対する支援はありません。育児休業が誰でも3年取得でき、その間何らかの手当てが支給されれば、無理して復帰する必要はありません。家庭が望む子供を計画する余裕が生まれます。今の育児休業給付では切れ目が生じています。

    他に給食費を含めて小学校の学校関連費用を減らせると、家計負担が楽になります。働く親を支援するなら、中学・高校においては昼食を家庭から持参せずに学校内で食事が賄えるような制度があると良さそうです。

    大学等は国立、公立大学は学費を免除する代わりに、卒業後に地域ごとの公的機関で働くことを義務付ける、医学部の地域枠のような制度を設けることで、成績優秀者が学費を抑えて地方で学び、都心で稼ぐというモデルを減らすと同時に、地域に人材を留め置くことで地方創生につなげることもできるでしょう。自治体が奨学生を募集して、学費負担の代わりに公務員として勤務してもらう、などの条件を付けてもよさそうです。

    タイムリーに実施されない政策のタイムラグ3つとは

    経済学では、政策には3つのタイムラグがあるとされています。

    1つは社会の課題を行政が知るまでの認知ラグと呼ばれるものです。そもそも気づかれなければ改善の使用がありません。直近では日銀総裁が、国民が値上げを許容したという発言をして、批判を受けて訂正しました。

    物価上昇に困っている人はそれほど多くないと思っているのでしょう。このような認知のされ方ですと、物価対策がなされる可能性は低そうです。

    次は、政策発動ラグと呼ばれるもの。金利の上げ下げや、金融緩和・引き締めなどは日本銀行の定期的な役員会で変更できるため、比較的速やかに政策が実施されます。一方で、新しい制度を作ったり、追加で予算を計上するには国会や議会での審議が必要です。

    通常、審議には数か月かかりますし、次年度予算での実施となれば一年後にようやく実施されます。法改正であれば、実際の施行はさらに先、などタイミングよく実行できるどころか、今更感のある政策にしかなりません。

    3つめに、成果が表れるまでのタイムラグがあります。公共工事のように作って、壊してであれば、入札などのスケジュールがあるものの、比較的速やかに仕事が生み出され、雇用に寄与します。一方で、金利の上げ下げのように、実生活にどんな影響があるかわからないような政策ですと、効果を体感するのに時間がかかります。


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