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“90歳”の最高齢アイアンマン・稲田弘さん 世界選の切符逃すも「91歳で取り返す!」

今回が最後の挑戦になるかもしれない

そんな稲田さんの歩みを止める出来事が起きた。昨年2月末、自転車のトレーニング中に車との接触事故に見舞われ、骨盤を骨折。入院2カ月という大ケガに見舞われた。これまでも幾度となく落車事故で鎖骨や肋骨を負傷しては復活を遂げ、腰部脊柱管狭窄症を発症したときも痛み止めを打ちながらレースに臨んでいた稲田さんだったが、歩行動作に致命的な部位の負傷とあってはさすがに慎重にならざるを得なかった。

入院中、負傷した部位に負担をかけないようリハビリ用のインドアバイクでペダルを回したり、できる範囲で努力を続けたものの、普段のトレーニング強度には程遠い。脚の筋力はおろか心肺機能も低下。退院後は数キロ走っただけで膝の半月板が痛むようになり、今年4月末時点で走れた最長距離はハーフマラソンの距離にも及ばない16キロにとどまっていた。

アイアンマンは開催年の12月末時点の年齢で区分するため、11月生まれの稲田さんは90歳としてカウントされる。90歳台でのアイアンマン挑戦は前代未聞で、応援する人たちから多くの支援も寄せられた。しかし応援が増えれば増えるほど稲田さん自身は次第にプレッシャーも感じるように。身体の不調を強く感じる一方で、応援してくれる人の期待に応えたいという焦りが募る。「アイアンマン世界選の挑戦は今回で最後になるかもしれない」─そんな思いも頭をよぎっていた。

「自分はまだ行ける」

不安を抱えながら臨んだ6月の前哨戦「アイアンマン70.3ハワイ」。大会の1カ月前からサポートメンバーとハワイに入り、暑熱順応や3年ぶりとなるレースに体を慣らしながら本番を迎えた。

本番は「自分でも驚くほど順調だった」(稲田さん)。バイクステージ(90キロ)はこれまでの自身の記録を30分も塗り替える4時間ほどでゴール。さらにラン後半はいわゆる「ランナーズハイ」のような状態に。最高40℃を超える気温でリタイアする人が続出するなか、稲田さんは暑さに苦しむこともなく、ゴール後も心肺・体力的にも余裕が残るという「誤算」が起きた。それだけにランでのタイムロスの悔しさが募った。

ただ、「走り方を工夫すれば行けると思うんだよ」と、どこか嬉しそうでもある。自分がまだアイアンマンレースを続けられることを確信したのだ。「コースはわかった。あとは下りで膝に痛みの出ない走り方を練習するだけ」。1年後のレースに向けて課題が見つかった。「強くなってあのコースにもう一度挑戦したい」と語る表情には、出国前に見せた不安の色はなくなっていた。「きっと来年の方がうまくいく」という稲田さん。90歳の新たな挑戦が始まった。(SankeiBiz編集部 後藤恭子)


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