政府が17日の新型コロナウイルス感染症対策本部で創設を決めた「内閣感染症危機管理庁」は、岸田文雄首相が昨秋の自民党総裁選から掲げてきた肝いり政策だ。政府内では組織再編に慎重論も根強かったが、首相が押し切る形で実現にこぎ着けた。危機管理庁のもとで機動的な感染症対策を行う体制の構築を目指すが、組織を新設しただけでは屋上屋を架す恐れもあり、いかに機能させるかが焦点となる。
「やると言ったらやるんだ。必ずやる」
首相は今月上旬、周囲に危機管理庁創設に向けた決意をこう強調した。
これまで首相が問題視していたのが、コロナ対応での明確な司令塔の不在だ。緊急事態宣言の運用などを担当する内閣官房の「新型コロナ等感染症対策推進室」と医療体制強化を担う厚生労働省の「新型コロナ感染症対策推進本部」に分かれていた。ワクチン接種では官邸と厚労省の意見が食い違い、対応の遅れにつながったこともある。
総裁選で危機管理庁創設を主要公約に掲げた岸田首相が誕生し、危機管理庁設置に向けた議論が本格化するかに見えたが、動きは鈍かった。新たな組織を作ることには「人材も余裕もない。つくる必要はない」(政府関係者)と反発もあったが、首相は「何もしないわけにはいかない」と準備を進めた。
最終的に内閣官房に危機管理庁を置くことを決めた。首相周辺は「有事に首相の指揮が迅速かつ徹底されるようにする」と語る。
ただ、厚労省にも感染症や予防接種などの部署を統合した「感染症対策部」が新設される。有事の際には危機管理庁の傘下に入るが、主導権争いが起きる懸念もある。感染症対応には政府と自治体との連携も不可欠だ。効果的な態勢構築に向けて首相のリーダーシップが問われる。(永原慎吾)