栃木で「官、士業、金融機関がタッグ」 コロナ禍からの企業業績回復へ資金繰りなど支援

    新型コロナウイルス禍で厳しい経営環境に置かれている中小・零細企業を支援しようと、栃木県内の官と士業、金融機関が情報交換を密にするなど地域連携を深めている。実質無利子・無担保でお金を貸し出す「ゼロゼロ融資」の元本返済が本格化するのを前に、企業の経営状態を把握し、少しでも早い資金繰りの正常化を目指す。

    国の出先機関や栃木県の機関、金融機関、税理士・公認会計士が一堂に集まった情報交換会=6月2日、宇都宮市内のホテル(TKC関東信越会栃木支部提供)
    国の出先機関や栃木県の機関、金融機関、税理士・公認会計士が一堂に集まった情報交換会=6月2日、宇都宮市内のホテル(TKC関東信越会栃木支部提供)

    3者が意見交換

    宇都宮市内のホテルに2日、関東財務局宇都宮財務事務所や関東経済産業局のほか、栃木県産業労働観光部など同県の機関、同県内の地銀、信金、信組といった金融機関、そして税理士や公認会計士が一堂に会した。

    最初に金融庁監督局の担当者が、金融機関や関係機関と税理士との連携強化などをテーマに基調講演。各機関から、補助金や再生計画の策定など中小・零細企業向けの支援策について情報提供が行われた後、8人程度のグループに分かれて意見交換した。

    主催した税理士・公認会計士の団体「TKC関東信越会栃木支部」によると、官、士業、金融機関の3者が一緒に意見交換をする機会は全国的にも珍しいという。同支部の高橋裕樹中小企業支援委員長は「県の補助金で知らないものがあった。(行政側は)もっと積極的に情報提供してほしい」と期待する。

    返済不能の恐れ

    3者が連携強化を急ぐ背景には、今後の企業業績に対する危機感がある。

    TKC全国会がまとめた「令和4年版TKC経営指標(BAST)」によると、TKCの財務システムを利用して昨年1年間に決算期を迎えた年商100億円以下の中小企業(約24万9千社)のうち、黒字企業の割合は前年比1・9ポイント上昇し、53・7%だった。

    だが新型コロナ禍前だった前々年の水準(54・1%)には戻っていない。1企業当たりの平均経常利益は前年比14・5%増だったが、要因はゼロゼロ融資などの補助金を活用して売上高の減少を補ったため。中小・零細企業の財務体質が脆弱なまま元本返済が本格化すれば、返済ができずに立ち行かなくなるケースが増えるおそれがある。

    動き出す企業支援

    このため、同県内でも連携を強化し、企業を支援する動きが活発化している。

    同県信用保証協会は昨年11月、経営者の資金繰り予定表の作成を支援しようと、TKC関東信越会栃木支部から講師を招いて内部研修会を実施した。同協会の職員は決算書を分析して保証審査をしているが、資金繰り予定表の作成の経験は少ない。研修会では作成方法をはじめ、経営者との話し方、ヒアリングのコツなどを学んだ。

    財務省や金融庁、経済産業省では①中小企業の収益力改善②事業再生③再チャレンジ-のそれぞれの段階を総合的に支援するため、各都道府県に「中小企業活性化協議会」を設置。金融機関、士業、都道府県などの支援機関と同協議会が連携し、中小企業支援を進める。宇都宮財務事務所の池田潔理財課長は「士業の方の力を借りなければ、中小・零細企業の支援はできない」と説明する。

    同支部は今後も3者の情報交換会を開催する考え。渡辺正昭支部長は「収益力を向上するため、経営者と一緒に考えていきたい」と話している。(鈴木正行)


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