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【EV化 動く関西企業】(下)チャンス到来 培った技術、得意分野で広がる商機も

EV(電気自動車)化で見込まれる自動車部品の減少で部品メーカーが生き残りを模索する一方、商機を見いだそうという企業もある。培ってきたモノづくりの力をEVにどう生かすか。自動車産業以外の産業も巻き込み、ビジネスチャンスをうかがう動きが活発化している。

繁原製作所製の減速機を搭載し、EVレースの全国大会で3連覇した車両=大阪府東大阪市
繁原製作所製の減速機を搭載し、EVレースの全国大会で3連覇した車両=大阪府東大阪市

試作のプロ

「歯車の静音や強度について、EV化ではより難しいモノづくりが要求されるようになってきた。以前はサーキット用でしか言われなかった高度な水準。当社にはチャンス」

中小企業のまち、大阪府東大阪市の町工場が立ち並ぶ一角にある繁原製作所。繁原秀和社長(44)は、EV化の進行を前向きに受け止める。

同社は部品製造に必要な加工設備を幅広く持ち、量産品でなく試作品作りを請け負う。特にレース用自動車の部品づくりで磨かれた、歯車の高精度な加工技術が強み。繁原氏が4代目社長に就任した令和2年には1億2千万円を投じ、ミクロン単位の微細調整ができる歯車研削盤を導入した。

EVへのかかわりは、リーマンショックにさかのぼる。業績が悪化していた平成21年当時に舞い込んだ、EV軽自動車用の減速機づくりが始まりだった。

減速機は、動力源から得た動力の回転速度を歯車で落とし、その分回転力(トルク)を生み出す装置。ギアを切り替える機構をもつものもある。モーター制御で回転を調整するEVには必要ないとされるが、繁原氏は「走行場面に応じてギアを切り替え、モーターの効率をあげることができる」と説明する。省エネやモーターの小型化につながり、EVでも活用できるというわけだ。

改良を重ね、同社製の減速機を搭載した実験車両「EV86」は平成26~28年の「全日本EVグランプリシリーズ」(日本電気自動車レース協会主催)で3連覇。減速機はその後、電動バスに採用されるなど実績を積む。今後、モーターの高性能化で回転速度が高まるほど減速機の歯車は強度や静音化が求められ、同社は今後の引き合いが増えるとみる。

コロナ禍では、減速機と周辺機器を組み合わせた製品を商社と共同開発したが、車両の開発が頓挫するなど、逆風にも見舞われた。だが、新たな可能性も出てきた。コロナ禍前の令和元年ごろから、エンジン部品や鋼材メーカーなどから減速機の試作依頼を受けることが増えてきたのだ。

試作を依頼してきたメーカーはいずれも、普段は大手自動車メーカーに部品を納入。ただ、今回の動きは大手自動車メーカーから独立した動きだ。EV化で自社製品の需要減が懸念されるなか、自社技術をどう生かしていくか、独自にEVを作ってテストしているのだという。1人乗りのものもあり、形態はさまざまだ。

繁原氏は「各社とも自社製品がなくなったり、大幅に減ったりすることへの危機感がある。応えていけるよう技術を高めていきたい」と気を引き締める。

大手も動く

モノづくり技術が集積する関西。大手メーカーもEV化に商機を見いだす。

日本電産はモーターと周辺機器を組み合わせた駆動装置を中国を中心に展開。EV世界最大手の米テスラと連携するパナソニックホールディングスは大容量の電池を開発し、電池の分野では世界的なプレーヤーだ。

素材産業や機械産業も得意分野を生かしてチャンスをうかがう。

化学メーカーのカネカは、EVの表面に搭載するフィルム型の太陽電池の開発を進める。軽量で柔軟性のある次世代型「ペロブスカイト」太陽電池と呼ばれ、世界最高水準の変換効率20%を目指す。事業は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成金交付が決定した。カネカ製品では、すでに結晶シリコン太陽電池が、トヨタの次世代電気自動車「e-パレット」の屋根部分に採用されている。

繊維メーカーの東洋紡は、EVの電子回路のノイズを除去する「積層セラミックコンデンサー」製造に欠かせない「離型フィルム」を生産。宇都宮工場(宇都宮市)に200億円を投じ、今夏から新たな生産棟の増設に着手。令和6年の稼働を目指す。

ダイキン工業は、EV向けのエアコン用冷媒を開発。電力消費量を減らすことで、試算ではEVの航続距離を最大で5割伸ばせるという。

産業育てる

EV化に向け企業規模を問わず進む技術開発。自社の技術を生かした取り組みが中心だが、事業化への道のりは険しい。

昨年廃業したエンジン部品用鋳造設備の大阪技研(大阪府松原市)は、EV化を見据え、ブレーキ向けの複合材開発や、銅を素材とする低圧鋳造設備の研究などに取り組んできた。エンジンで培った技術を生かしたが、軌道に乗せるのは容易ではなく本格的な事業には至らなかった。

社長だった大出竜三さん(70)は「メーカーは今ある技術でのEV開拓を急ぐべき」とする一方で、自動車の「電動化」を進める政府の施策や産業界に注文をつける。「燃焼しても二酸化炭素を増やさない合成メタンガスを燃料としたエンジンの開発など、従来のエンジン技術を生かせる場はある。政治は単にEV化を進めるだけでなく、広い視野で産業全体を育てることを考えてほしい」と訴える。(織田淳嗣)


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