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「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的

PRESIDENT Online

ノーベル賞級の研究をする人を集める「万人計画」

――「千人計画」に応じた人たちにはノルマはあるのか。

論文執筆のノルマを課しているようだ。『ネイチャー』や『サイエンス』など世界的に名だたる科学誌への掲載を求めていた。さきほど、中国の論文数が増えていると説明したが、こういった圧力も反映されているのだろう。

中国は、00年から17年までに、6万6690人を留学させて、彼等は米国で博士号を授与されている。米国の大学で博士号を取得する学生のおよそ1割強が中国人留学生だ。シリコンバレーや研究機関で、中核的役割を果たしている。07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ。

中国には「万人計画」もある。ノーベル賞級の研究を行う研究者を集めるものだ。

日米欧と中国では「目指す未来」がまったく違う

――日本は米国や欧州各国とも、科学技術の競争をしている。中国との競争はそれとは違うのか。

全く違う。日米欧など西側先進諸国と中国は、国際秩序に関する考えで大きな隔たりがある。西側先進諸国が目指す秩序は「自由で開かれた、法の支配に基づく世界」だ。それぞれの国が平等で、法の支配、自由を尊重するというものだ。

中国が目指す秩序は何か。習主席は頻繁に「新型国際関係」という言葉を使うが、西側主導の秩序への挑戦にほかならない。「自由、人権、民主主義」といった日米欧の価値観に真っ向から挑戦している。中国共産党による一党支配が自由や平等、法の支配とはほど遠いものであることは、中国が新疆ウイグル自治区や香港で行っていることを見れば明らかだ。対外関係でも、他国と対等なつながりを持とうとしているようには見えない。

習主席の言う「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」に基づき、中国を頂点としたピラミッド型の国家連合を目指しているというのが本質だ。「一帯一路」構想の一環でアジアやアフリカの途上国に、インフラ整備のための桁違いの投資を行っているが、単なる経済協力ではない。それは、しばしば当該国の財政を圧迫し、「援助」自体がエコノミック・ステートクラフト化している。最終的に目指しているのは、中国の資金を背景とした影響力の行使だ。

中国は、単なる技術競争をしているだけではない。習主席の視線の先には、我々西側先進諸国が想像するのと全く異なる人類の未来が広がっている。

日本にとっての軍事的な脅威は増していく

――中国の国家体制は盤石なのか。

短期的に習主席の基盤が固まっていることは間違いないと思う。

ただ、習主席は、政権全体の動揺を懸念していると思われる。中国共産党とは異なる価値を信じる組織に対する恐れは、日本人が考える以上に大きい。チベット、台湾、ウイグル、民主派、法輪功の5つを彼らは「五毒」と称し、いずれも中国共産党の体制に服さないものとして徹底的に弾圧していることが、その表れだろう。中国の歴史を見ると平和的、民主的な政権移行はなく、王朝が代わることにより政権が代わるというのが歴史が示すところだ。中国共産党は王朝ではないが、民主的政権交代を容認しない中国共産党による一党支配であり、そうした中国自身の歴史が常に念頭にあると思う。

習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を実現するために、富強、強軍の政策を継続することは間違いない。日本にとって軍事的な脅威は増していくことを覚悟しなければならない。

北村 滋(きたむら・しげる)

前国家安全保障局長

1956年12月27日生まれ。東京都出身。私立開成高校、東京大学法学部を経て、1980年4月警察庁に入庁。83年6月フランス国立行政学院(ENA)に留学。89年3月警視庁本富士警察署長、92年2月在フランス大使館一等書記官、97年7月長官官房総務課企画官、2002年8月徳島県警察本部長、04年4月警備局警備課長、04年8月警備局外事情報部外事課長、06年9月内閣総理大臣秘書官(第1次安倍内閣)、09年4月兵庫県警察本部長、10年4月警備局外事情報部長、11年10月長官官房総括審議官。11年12月野田内閣で内閣情報官に就任。第2次・第3次・第4次安倍内閣で留任。特定秘密保護法の策定・施行。内閣情報官としての在任期間は7年8カ月で歴代最長。19年9月第4次安倍内閣の改造に合わせて国家安全保障局長・内閣特別顧問に就任。同局経済班を発足させ、経済安全保障政策を推進。20年9月菅内閣において留任。20年12月米国政府から、国防総省特別功労章(Department of Defense Medal for Distinguished Public Service)を受章。2021年7月退官。現在、北村エコノミックセキュリティ代表。

(前国家安全保障局長 北村 滋 聞き手・構成=大藪剛史)


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