【ニューヨーク=平田雄介】核兵器の開発や保有、使用などを全面的に禁止する「核兵器禁止条約」(核禁条約)の第1回締約国会議がオーストリアの首都ウィーンで21日午前(日本時間同日夕)開幕する。核廃絶のほか、被爆者の救済、核実験で汚染された環境の修復に向けた条約履行の道筋を議論し、最終日の23日に行動計画などをまとめた文書の採択を目指す。
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核禁条約は、核兵器がもたらす被害の非人道的な性質に着目し、その存在を違法化した初の条約。2017年の国連会議で122カ国の賛成を得て採択され、昨年1月発効した。核抑止力を否定する「使用による威嚇」のほか、核兵器の製造や配備、実験、移譲、こうした活動を支援、奨励する行為も禁じている。
20日までに62カ国が条約を批准した。ただ、ロシアや米国、中国などの核保有国、イランなど核兵器の開発が疑われる国、日本など核保有国の拡大抑止(核の傘)に依存する国は条約に入っていない。
ウクライナに侵攻したロシアが核の恫喝を繰り返す中、締約国が今後どの程度増えるかは見通せない。
被爆地の広島、長崎では「唯一の戦争被爆国」として日本の参加を求める声が強い。日本政府は国連加盟193カ国に匹敵する191カ国が批准する核拡散防止条約(NPT)を「核軍縮・不拡散体制の礎石」と位置づける。核禁条約の署名・批准には慎重で、今回の会議へのオブザーバー参加を見送った。
他方、「核の傘」の下にある北大西洋条約機構(NATO)加盟国からは、ドイツ、ノルウェー、オランダ、ベルギーがオブザーバー参加を決めた。
核禁条約の制定は非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が議論を主導し、17年のノーベル平和賞を受賞した。ただ、強い言葉で核保有国などを非難するICANの活動は「国際社会の分断を招いた」(核抑止の専門家)側面もある。
会議の議長を務めるオーストリア外務省のクメント軍縮局長は、NGOの役割を重視したうえで「今回の会議は締約国の正式な会合だ。核保有国の誠実な軍縮交渉義務を定めるNPTなど既存の条約との補完性を高めたい」と話している。