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世界有数の宇宙飛行士でも、給与は普通の職員と同じ…野口聡一さんのJAXA退職が示す「日本方式の限界」

PRESIDENT Online

■つぶしがきかないのはエンジニアも同じ

宇宙飛行は一握りの人しかできない。きわめて稀有な体験だ。JAXAの飛行士の育成や雇用には多額の国費が投入されている。

飛行士がどのようにキャリアを形成し、その経験をどう生かしていくか、再雇用はどうあるべきか、などについて、これまでJAXAではあまり検討してこなかったという。退職してしまえば、その後で何をするかは本人の自由であるし、退職者がまだ少ないことや、今後、定年も延長されるので、時間的余裕もあるからだろう。

だが、選抜中の新しい飛行士も誕生する。これから飛行士が増えていく中、飛行士のキャリアの在り方を描くことも大事だろう。

実は宇宙関連の仕事をしている人の間でも「つぶしがきかない」と嘆く声が少なくない。衛星開発などの仕事をするエンジニアたちだ。

衛星はいったん宇宙に打ち上げてしまうと、故障しても修理できない。そのため、部品やシステムには、頑丈で安定した技術や、宇宙用の特別な部品を使う。価格も高くなる。

■「転職して一体何ができるのだろうか…」

ITやソフト関連技術も、確実性を重視するため、地上で使われているものより古いものを採用している。最近は国内の宇宙ベンチャーや大学が、秋葉原で売っている普通の部品を使い、衛星の価格を下げる取り組みを進めている。まだ少数派だが、こうした新しい動きは今後、進むだろう。

「古い技術になじんでいる僕らは、転職して一体何ができるのだろうか……」。エンジニアのぼやきも聞こえてくる。

これまでは宇宙という特殊な環境下での仕事のため、こうした問題は見過ごされてきた。「宇宙は特別」という発想も根強い。だが、そうした考えから脱却し、つぶしがきくような技術や産業に育てていく意識を持つことが必要だ。そうでないと、日本の宇宙の競争力はどんどん下がってしまう。

宇宙飛行士の年齢も、一律にはくくれないところがある。NASAでは飛行士を退いた後、政治家に転じ、その後77歳で再び宇宙飛行をした例もある。

退職後の飛行士のキャリア動向や、宇宙産業の在り方に光を当てたいという思惑が、今回の野口さんにはあったのではないだろうか。

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知野 恵子(ちの・けいこ)

ジャーナリスト。東京大学文学部心理学科卒業後、読売新聞入社。婦人部(現・生活部)、政治部、経済部、科学部、解説部の各部記者、解説部次長、編集委員を務めた。約35年にわたり、宇宙開発、科学技術、ICTなどを取材・執筆している。1990年代末のパソコンブームを受けて読売新聞が発刊したパソコン雑誌「YOMIURI PC」の初代編集長も務めた。


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