自動車部品大手のマレリホールディングス(HD)は24日、民事再生法の適用を東京地裁に申請したと発表した。民間の信用調査会社によると、負債総額は約1兆1千億円。24日に開催した債権者会議で融資する全金融機関から再建案の同意を得ることができず、事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)の成立を断念した。法的整理の一種である「簡易再生」の手続きに移行し、経営再建を目指す。
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マレリは5月末に金融機関に約4500億円の債権放棄を要請。親会社で米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)を支援企業とする再建案を提案していた。KKRによる約830億円の第三者割当増資引き受けと大規模なリストラ案も提示していた。
事業再生ADRの成立には取引のある全26金融機関から同意を得ることが条件となっていた。24日の債権者会議では債権額の95%の同意を得たものの、100%には達しなかった。「中国系金融機関が反対に回った」(国内の金融関係者)もよう。
そのため、マレリはADRと同様の枠組みで再建案を進められる簡易再生の手続きへの移行を決めた。「ADRが成立しなかったのは残念だが、再建を迅速かつ確実にするために民事再生法の申請を決断した」(マレリ広報)と説明した。
ADR申請後に簡易再生手続きに移行するのは国内で初めての事例となる。簡易再生の場合、再建案の成立に債権額の60%以上の同意が必要となる。「すでに90%以上の同意を得ており、成立の可能性が高い」(同)。
簡易再生はマレリHDだけが申請し、「グループ会社や取引先などの支払いに影響はない」(同)としている。マレリHDの金融機関が対象で、金融機関以外の取引先への支払いは継続するという。
マレリは7月上旬に簡易再生を開始。中旬に債権者集会を開き、再建案を可決させて裁判所の認可を得たい考えだ。8月上旬にも金融機関の債務削減とKKRの出資の完了を目指す。
KKRは「簡易再生手続き期間中もマレリは通常通り事業を継続し、必要に応じて、つなぎ融資を提供したい」とコメントした。
簡易再生手続きが完了しても自動車業界は半導体不足による減産が長期化し、電動化で部品点数の減少も見込まれ、マレリの再建の道のりは厳しい。
(黄金崎元)