【カイロ=佐藤貴生】イスラエルのラピド外相は23日、トルコの首都アンカラを訪れてチャブシオール外相と会談し、会談後の共同記者会見で、イラン情報機関によるイスラエル人襲撃計画を未然に防いだとして、トルコの協力に「深い感謝の意」を表明した。イスラエル外相のトルコ訪問は16年ぶりとされ、双方は冷え込んでいた外交関係を再建することでも合意した。
両国のメディアによるとトルコ警察当局は先週、イスラエル人の襲撃や誘拐を計画していたとして、学生やビジネスマンを装ったイラン情報機関の関係者ら10人近くをイスタンブールで逮捕した。元大使夫妻のほか旅行者らが標的だったとみられる。
ラピド氏は会見で、「両国の協力でイスラエル市民の生命が守られた」と述べ、「トルコの主権の明らかな侵害だ」としてイランを非難した。一方、チャブシオール氏は計画阻止のためラピド氏と緊密に連絡を取っていたとした上で、「トルコ国内でのテロは許さない」と述べた。
摘発との関係は不明だがイランでは23日、最高指導者に近い革命防衛隊の情報部門トップが交代したと報じられた。首都テヘランでは5月下旬、革命防衛隊の大佐が銃撃され死亡する事件があり、ライシ大統領は報復を明言。イスラエルを念頭に置いた発言とみられていた。
ラピド氏はまた、トルコとの間で相互に大使を派遣する協議を始めたと述べた。両国は2018年、在イスラエル米国大使館のエルサレム移転を受け、抗議するパレスチナ人に治安部隊が発砲、多数が死傷したことなどで関係が悪化し相互に大使を召還した。パレスチナを支持するトルコのエルドアン政権はそれ以前からイスラエルと対立していた。
エルドアン政権は近年、強権的な対外政策を緩めて周辺国との融和外交を進めている。22日にもサウジアラビアの皇太子がトルコを訪れ、関係修復で合意したばかりだった。