【マドリード=板東和正】北大西洋条約機構(NATO)は28~30日、スペインのマドリードで首脳会議を開き、ロシアと中国の脅威に対抗するための変革を打ち出す。今後10年間の行動指針となる新たな「戦略概念」を採択し、中国に対するNATOの立場を初めて示す見通し。有事に緊急展開させる多国籍の「NATO即応部隊」(NRF)を、現状の7倍以上となる30万人超に増員する方針も決まるとみられる。
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NATOのストルテンベルグ事務総長は首脳会議に先立つ27日、新たな戦略概念では、ロシアを「われわれの安全保障に対する最も重大かつ直接的な脅威」と位置づけることを明らかにした。2010年に採択された現行の戦略概念ではロシアについて、「真の戦略的パートナーシップを求める」と記していた。
ストルテンベルグ氏はまた、新戦略概念には中国対策を初めて盛り込み、「中国がわれわれの安全保障、利益、価値観にもたらす挑戦に言及する」と語った。中国の軍事的台頭に対する懸念が強まったのは10年以降で、現行の戦略概念では触れられていなかった。
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今回の首脳会議には、対中連携を目的に非加盟国の日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの首脳も招かれている。ただ、戦略概念での中国言及には慎重な姿勢を示す加盟国もあり、一致した姿勢を示せるかが注視される。
ロシアのウクライナ侵略を受け、首脳会議では東欧の防衛力増強も喫緊の課題として協議される。
ストルテンベルグ氏によれば、現状では4万人規模のNRFを7倍以上に増員し、即応能力を高めるための改組なども行う。東欧駐留部隊の増強と合わせ、「冷戦以降、最大の集団防衛と抑止力の見直しになる」という。
首脳会議では、ウクライナ軍の近代化に向けた新たな「包括的支援策」でも合意する。短期的な支援だけでなく、ソ連時代の軍備に依存するウクライナ軍の近代化支援が打ち出される見通し。ストルテンベルグ氏は今回の会議で「多くの重要な決定がなされる」とし、「変革」を示す場になると述べた。