痔や水虫も恥ずかしくない 「薬の自販機」拡大なるか

    国内で初めてとなる「薬の自販機」の実証実験が始まった。この実験では、大正製薬の医薬品など30品目を8月末まで購入することができる。大正製薬は、ドラッグストアの営業が難しく、インターネット通販でも手元に届くまでに時間がかかるような過疎地域や離島などでの利便性向上などのため、自販機での医薬品販売を目指している。

    大正製薬が実証実験を始めた「クスリの販売機」=JR新宿駅(吉沢智美撮影)
    大正製薬が実証実験を始めた「クスリの販売機」=JR新宿駅(吉沢智美撮影)

    ためらいがちな商品も

    大正製薬が設置した「クスリの販売機」はJR新宿駅南改札内にある。

    風邪薬「パブロン」シリーズや解熱鎮痛剤「ナロン」シリーズなど、第2類医薬品・第3類医薬品・医薬部外品の30品目が販売されている。大正製薬の担当者によると、販売機には緊急性のあるものとして、胃腸薬や頭痛薬などのほか、「痔や水虫の薬といった、レジで顔を合わせて買うのをためらいがちな医薬品などを幅広く取りそろえている」という。

    商品を購入する際は販売機のタッチパネルを操作する。風邪薬など乱用が懸念される成分が含まれる医薬品に関しては購入する際に顔認証を求めており、医薬品が飲み終わる日数までは再購入できない。

    決済はSuica(スイカ)やPASMO(パスモ)といった鉄道会社が発行している交通系ICカードに限られる。

    現在、第2類医薬品・第3類医薬品は薬剤師や登録販売者がいる店舗でしか販売できない。そのため販売機を駅構内にあるドラッグストア「Eki RESQ 新宿南口店」の通路を挟んだ向かいに設置することで、実地で医薬品を管理しているというかたちをとった。

    販売機で医薬品を購入する際は同店にいる薬剤師らが店舗業務と並行し、タッチパネルに提示される購入内容を確認することで販売を許可する仕組みだ。そのため実証実験では午前10時から午後6時までの稼働となっている。

    過疎地や離島にも

    医薬品はインターネット販売も行われているが、緊急の際にすぐに手元に届くことは難しい。店舗販売でも薬剤師らを確保しなければならないという課題がある。そのため大正製薬は過疎地域や離島などへ販売機を設置し販売することを目指している。しかし医薬品は薬剤師らがいる店舗でしか販売できないという制約から、薬剤師らが遠く離れた場所から販売機での販売・保管をすることは、まだまだ厳しいのが現状だ。

    実証実験は8月末まで行われる予定。まずは実証実験によって改善点などを洗い出し、検証していく必要がある。

    大正製薬の担当者は「第1類医薬品も必要なところで必要な人が買えないという課題がある。第1類は使用者の情報の確認が必須となるため、顔認証だけでなくスマートフォンアプリで連携するなど新しい仕組みを議論する必要がある」と説明。ドラッグストアがない駅や深夜にでも販売機で医薬品が購入できるように目指していくと話している。(吉沢智美)


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