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クールジャパンの闇と緊縮政策の闇を破れ

クールジャパン機構といわれる官民ファンドがある。正式名称は、海外需要開拓支援機構だ。「官民ファンド」とは、政府と民間企業などが共同で出資し、公的な色彩の強い事業を行うものである。最近では、リーマンショック以後の経済危機など経済対策の一環として設立されることが多い。クールジャパン機構は、安倍政権下の2013年に設立され、約8000億円の出資金の大半は政府によって行われている。その他に民間金融機関、広告代理店など大企業が出資者に連なっている。

(Getty Images)※画像はイメージです
(Getty Images)※画像はイメージです

このクールジャパン機構、そしてクールジャパン戦略そのものが現在、かなり厳しい批判をうけている。

そもそも「クールジャパン」という標語は、直訳すれば、「かっこいい日本」だ。クールジャパンは、海外に日本文化の素晴らしさを売り込む日本の国際戦略に与えられた名称として有名だ。内閣府のホームページにある紹介文によると、「「食」、「アニメ」、「ポップカルチャー」などに限らず」対象を拡大し、「日本のブランド力を高めるとともに、日本への愛情を有する外国人(日本ファン)を増やすことで、日本のソフトパワーを強化する」というものだ。

クールジャパン戦略のキーになるのが、この政府の解説にも登場する「ソフトパワー」というものだ。もともと米国の政治学者ジョセフ・ナイが21世紀初めに広めた考え方だ。ソフトパワーとは、軍事力や経済力など目にみえる「ハードパワー」に対抗する概念で、自国の文化に対する外国人の共感や支持を得ることを通じて、国際的な地位の向上をはかる狙いを持っている。もともとナイは、米国を念頭にしてこのソフトパワーを考案していて、要するにかなり強力な米国の軍事力・経済力を背景にして、米国の価値観を他国に一方的に押し売りをするというきな臭い考え方でもあった。特にこのソフトパワーが米国で持て囃された時は、9.11などの対米テロが過激化し、イスラム圏へ民主主義などの米国的価値観を押し売りする必要性もあった。イスラム圏の国々も欧米のように民主化すれば、テロの脅威が沈静化するという当時の米国政府の狙いと、ソフトパワー論は近い関係にあった。

ところが日本にこのソフトパワー論が輸入されると、軍事力(防衛力)や経済力との関係や、また対テロ的な要素は希薄になる。単に海外からの観光客獲得のための景気対策の側面が色濃くでたものになる。ただ本当にクールジャパン戦略が、海外の観光客や、あるいは日本文化の理解を促進することになるならまだよかったのだが、実際はかなり異なる展開になった。

例えばインバウンド需要の大半は、アベノミクス以降の円安傾向の定着が大きく貢献しているだろう。2012年には訪日外国人旅行者数は836万人だったのが、コロナ禍前の19年には3188万人まで3.8倍に大きく拡大した。その期間中の為替レートの推移を、対ドルでみると民主党政権下は70円台後半であった。それが19年には平均すると109円台の円安水準で推移した。対ドルだけでなく主要通貨でみても円安傾向にあり、これがインバウンド需要の急増を生み出したことは明白だろう。訪日外国人旅行客の3割を占めていた中国からの旅行客もまたドルと緩やかに中国通貨の元の価値が連動していたので、やはり円安の恩恵をうけていたのと、他のアジア圏からの外国人同様に航空運賃が割安になったこと、ビザの取得が容易になったことも激増の背景にあっただろう。もちろん日本への関心が高いことはいえるが、だがそこにクールジャパン戦略がどう貢献したのか、まったくわからない。

ところでクールジャパン機構の役割はまさにクールジャパン戦略そのものである。ただし先に述べたように、日本政府が防衛力や経済力と連動させて積極的に文化戦略を展開するというものではない。出資金の規模はでかいわりには、日本国内でも海外でもその活動を知る人は少ない。クールジャパン機構は一応、海外での新規企業に投資して、そこで日本への関心を誘発する事業を支援し、日本国内への観光客増(インバウンド効果)や、また日本の観光客が海外にでていく契機(アウトバウンド効果)を作ることを目指している。

例えば、ベトナムの日本食材の流通基盤を構築するとされる現地法人に対してクールジャパン機構は出資を決めている。またマレーシアなどアジア各国で日本文化を宣伝する展示を企画している。だが、これらがどう日本への経済刺激や文化理解に貢献しているかはまったくわからない。


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