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鉄鋼大手、電炉や認証活用 「低CO2鋼材」を強化 脱炭素需要で収益底上げも

鉄鋼各社が、製造時の二酸化炭素(CO2)排出が少ない鋼材の開発や生産を強化している。日本製鉄やJFEスチールは、主流の高炉に比べて排出量を抑えられる電炉を使った生産に力を入れる。神戸製鋼所は過去に同社が削減したCO2分を割り当て、購入した企業が環境負荷を減らしたとみなせる鋼材の販売に乗り出した。脱炭素化の取り組みが世界規模で活発化し、企業にも環境負荷低減の責任がこれまで以上に求められる中、こうした「低CO2鋼材」の需要が増えるとみて対応を急ぐ。

JFEスチールが電炉の設備を増強する仙台製造所=仙台市
JFEスチールが電炉の設備を増強する仙台製造所=仙台市

日鉄は、約280億円をかけて瀬戸内製鉄所広畑地区(兵庫県姫路市)に電炉を新設し、令和5年度に供給を始める。

高炉を使った製鉄法は、石炭を蒸し焼きにしたコークスを還元剤に使い、原料の鉄鉱石から酸素を取り除き、鉄を取り出す仕組みだ。鉄鉱石とコークスの反応過程で酸素と炭素が結びつくため、製造時のCO2排出量が多い。これに対し、市中や加工工場から回収した鉄スクラップを電気の熱で溶かして鉄を作る電炉は、排出量を4分の1ほどに抑えられる。大量の電力を消費するが、日鉄は化石燃料を使わない「グリーン電力」の併用で排出量を実質ゼロに抑える考え。

電気自動車(EV)のモーターに使う「電磁鋼板」などの高級鋼材を中心に生産する。生産量は、同社の鋼材出荷量の約2%に相当する年70万トン程度となる見通し。鉄スクラップには不純物が混ざっており品質確保は難しいが、橋本英二社長は「最高級の電磁鋼板を作る技術を確立している」と強調する。

電炉を使った高級鋼材の生産は、JFEスチールも6年度に始める。十数億円を投じ、仙台製造所(仙台市)の既存設備を増強する。年間生産能力は従来比で2割ほど高まり、日鉄とほぼ同量の70万トン強となる。同社も自動車向けなどを想定しているという。

一方、神鋼は新ブランド「コベナブル・スチール」を立ち上げ、CO2排出削減効果を付与した2種類の鋼材の販売を開始した。

販売するのは、製造時のCO2排出量が実質ゼロの「コベナブルプレミア」と、50%削減した「コベナブルハーフ」。前者はトヨタ自動車の水素エンジンを搭載したレース車で、地面からの衝撃を吸収するサスペンション部品の素材に採用された。

同社は、CO2排出量を約2割削減できる独自技術を持つ。鉄鉱石から酸素を取り除いた「還元鉄」を一部用い、CO2排出につながるコークスの使用量を減らすものだ。

今年4月には英国の認証機関から、同技術などで2年度に排出量を約2万1000トン減らしたとする認証を取得した。コベナブル・スチールの製品にこの認証を割り当てることで、CO2排出を実質的に減らしたとみなせるようにした。こうした認証の取得は国内初という。

鉄鋼業界のCO2排出量は、国内製造業の4割強を占めており、排出削減が喫緊の課題となっている。低CO2鋼材の需要拡大は、業界の脱炭素化を進める上で追い風となる。

国内粗鋼生産量は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けて急減した2年からは回復したものの、人口減などを背景にした内需の減少による下落傾向は変わらず、鉄鋼各社は収益確保に苦しんでいる。通常の鋼材に比べ割高になるものの、環境負荷低減という付加価値がついた低CO2鋼材は、広く受け入れられるとみられ、業界の収益力を底上げする可能性もありそうだ。(井田通人)


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