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東京都が自転車政策を加速 利用増加で際立つ「歩道通行」の弊害

「レインボーブリッジ(高速道路)を封鎖して自転車を走らせる」─。小池百合子・東京都知事が東京五輪のレガシーとして発表したイベントに、ネット上で自転車愛好家などが関心を示したのに対し、自転車の車道走行を迷惑視するクルマ側からは「危ない」「迷惑」などといった批判が寄せられた。ニューヨークやロンドンなどではすでに開催されている都市型の自転車イベントだが、いまだに自転車が「車両」として認識されず、歩道通行が実質容認されている日本では、車道での自転車の動きが目立つほど危険な印象が強まるようだ。ただ、感染症対策や環境問題などの面で世界的に自転車の価値が見直されるなか、東京都内では交通事故全体での自転車関与率が高まるなど歩道通行の弊害も目立ち始めている。こうした事態に都は、自転車レーンの整備や路駐車両の対策など、車道上の安全な走行空間の整備に向けて動きを加速させる姿勢を見せている。

法律では車道通行が原則となっている自転車だが…
法律では車道通行が原則となっている自転車だが…

自転車の歩道走行、先進国では日本だけ

「どこを走ってるんだ!」─。自転車でスイスを旅していたときのことだ。日本の感覚で車道から歩道に上がってしまったところ、歩道にいた高齢男性からものすごい剣幕で注意を受けた。後に、欧州を自転車で旅したことのある知り合い数人が同様の経験をしていたことを知った。

自転車が歩道を通行するという日本では見慣れた光景。しかし、自転車政策について数々の提言を行っている自転車活用推進研究会の小林成基(しげき)理事長によると、実はこの慣習は先進国では唯一日本だけだという。欧米各国では自転車は車道、もしくは自転車道を通行することが徹底されており、歩道を走ることはクルマが歩道を走る感覚に等しい。自転車は車道通行というルールがクルマ側にも徹底されているため、クルマは自転車を「道をシェアする相手」として優先し、「邪魔者」として扱うことはないという。 日本でも自転車は道路交通法上「軽車両」であり、歩道通行が認められる「例外」を除いては車道通行が原則とされている。しかし日本ではその認識が浸透せず、自転車は「走りやすさ」で歩道か車道かを選択しているのが現状。模範となるべき警察官でさえ歩道を自転車で並走する姿を頻繁に見かけるなど、日本では自転車は軽車両ではなく、まるで「速い歩行者」と化している。

ルールと現実のずれ

なぜ、このような“ガラパゴス現象”が起きたのか。小林氏によると、ターニングポイントは昭和45年(1970年)の道交法改正にあるという。昭和30年代後半から40年代前半にかけて交通事故が急増し、自転車事故も多発したため、道交法の改正で自転車の歩道通行を実質可能にした。その結果、人々は安全な走行空間を求めて歩道を自転車で走るようになってしまった。「交通戦争からの救済」といえば聞こえは良いが、実質的には経済の要であるクルマを中心とする政策。路面電車も多くが姿を消したように、クルマが速度を上げて走行できる道路環境が一気呵成に整えられたのだ。

同様の政策は日本以外に唯一北欧のノルウェーでも導入された。しかしそれが失策であることに気付いた同国は、およそ10年で自転車を車道に戻した経緯がある。その反省をもとに現在は着実に自転車道が整備されつつあり、その点では日本とは大きく異なるという。

日本で今一度自転車走行のルールを徹底しようという動きが始まったのは2008年の道交法改正。歩道通行を認める「例外」を明示することで車道通行の原則を強調した格好だが、日本の道路の現状では「例外」や「徐行」という建前上のルールで歩道回避の余地を残さざるを得ず、実質効力は無いに等しかった。

2016年に「自転車活用推進法」が制定され、環境整備の必要性が政策として打ち出されて今年で6年目。いまなお自治体の動きは鈍く、ルールと実態が乖離した状態が続いている。車道上の自転車レーンも増えつつあるが、道幅が狭かったり路上駐車がずらりと並んでいたりする車道では、多くの人が安全を求めて歩道に“回避”せざるを得ない。そうした状況下では自転車に対するクルマ側の意識が変えることもない。自転車が安全に走行できる環境が車道上に整備されない限り、負のループを断つことはできない。


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