半導体の新エース企業に賭けたソフトバンク孫社長 「先見の明」問われる3兆円投資

 

 ソフトバンクグループの孫正義社長が3兆円を超える巨額資金を投じ英半導体開発大手、アーム・ホールディングスの買収に踏み切った。これはすべてのモノがインターネットにつながる「IoT(インターネット・オブ・シングス)」の発展に加え、コンピューターの人工知能(AI)が人間の知能を超える「シンギュラリティ」にアームが不可欠だと考えたからだ。

 一般的な知名度はまだ低いが、アームは米インテル社の新たなライバルにあたる存在だ。スマートフォンなどのモバイル端末用の演算処理用半導体を開発している。例えば「iPhone」のCPU(中央演算処理装置)「Aシリーズ」もこのひとつ。ライセンスを供与する半導体は年間約150億個が出荷されているという。

 孫社長は「これが何十倍、何百倍にも増える」と述べ、その将来性に期待した先行投資であることを強調した。携帯電話市場の発展を見込み2006年に英ボーダフォンの日本法人を約2兆円で買収するなど、次の時代をにらんだ果敢な投資でソフトバンクを成長させてきた。

 ただ、それまでの事業との相乗効果に疑問を持たれたことも多く、今回のアーム買収でも同様の声が出ている。12兆円に上る有利子負債がさらに膨らむ懸念もあり、19日の東京株式市場では株価が大幅に下落した。

 それでも、孫社長は「たかが3兆円」とまったく意に介さず、「ソフトバンクとアームは、最大のパラダイムシフト(劇的な変化)であるIoTに挑戦する」と述べた。市場の懸念をはね返し巨額投資に見合う成果を出せるのか。その“先見の明”が再び試される。