電通社長が来月辞任を表明 過労自殺事件で引責、事業に悪影響も

 

 広告代理店最大手の電通の石井直社長(65)は28日、東京都内で記者会見し、来月辞任すると表明した。女性新入社員の過労自殺をめぐる労働基準法違反事件の責任を取る。対応が後手に回れば、2020年東京五輪・パラリンピックなど社運を懸けた事業に悪影響が広がりかねないと判断した。

 過労などによる自殺は社会問題化し、電通の企業体質への批判は厳しさを増している。新たな経営体制で働き方の変革や業務の見直しなどを進めて信頼回復を急ぐ。

 石井氏は記者会見で「過重労働を阻止できなかった。心よりおわび申し上げる」と謝罪した。

 昨年12月に高橋まつりさん=当時(24)=が過労などで自殺、その後労災認定されたのをきっかけに、労使協定(三六協定)を超える長時間労働が常態化していたことが判明した。厚生労働省は今月28日、労基法違反の疑いで法人としての電通と当時の上司に当たる幹部1人を書類送検した。石井氏自身も東京労働局の事情聴取を受けた。

 電通の事業領域は広告代理店業のほかにもスポーツやデジタル分野など広範に及ぶ。国際オリンピック委員会(IOC)や国際サッカー連盟(FIFA)と関係が深く、放映権などさまざまな権利を保有し、スポンサー探しも手掛ける。デジタル分野への進出にも積極的だ。

 メディア業界に詳しいSMBC日興証券の前田栄二シニアアナリストは「電通以外に大規模なビジネスを扱える企業がなく、書類送検の影響はあまり出ないだろう」と話す。

 ただ連日の報道などで、企業イメージは悪化するばかりだ。9月にはインターネットの企業広告事業で、実際にパソコンの画面に表示しないなどした不正請求問題も発覚。長時間労働問題と合わせ、企業体質への批判が強まっている。

 前田氏も「実務面では午後10時消灯で、仕事を受けにくくなる可能性がある」としており、今後、業績にも徐々に影響が広がる恐れがある。