三越伊勢丹“お家騒動”再び 三越出身者がリストラや待遇差に反発、一枚岩になれず
三越伊勢丹ホールディングス(HD)の大西洋社長が、業績不振を受け引責辞任に追い込まれた。伊勢丹出身の大西社長は経営立て直しのため、リストラを模索していたが、石塚邦雄会長ら三越出身者の反発を招いたことが背景にある。トップ交代で表面化した社内対立に、業界内では「また“お家騒動”か」との見方も少なくない。
三越伊勢丹HDの幹部は7日、今回のトップ人事について「経営体制を一新し、企業価値の向上を図るため」と説明した。
だが、「一新する」と言いながら、石塚会長は6月下旬の株主総会まで続投するという不可解な人事。石塚氏の後任は同時に発表できず、6月までに選定するという“ドタバタ”で、突然のトップ交代による混乱ぶりを強く印象付けた。
トップ交代にまで発展した社内対立の発端は、大西社長が表明したリストラ案だった。
大西氏は昨年11月、機関決定していないにもかかわらず、伊勢丹の松戸店(千葉県松戸市)と府中店(東京都府中市)、松山三越(松山市)、広島三越(広島市)の4店を構造改革の対象に挙げた。
大西氏は「検討段階で正式決定はしていない」と弁明したものの、突然の発言に社内に動揺が広がり、地方の取引先からも問い合わせが殺到した。特に反発したのが石塚会長ら三越出身者だった。
三越伊勢丹HDは2008年の統合以降、リストラ対象は旧三越が大半で、旧伊勢丹で閉店したのは吉祥寺店のみ。大西氏は旅行や婚礼など事業の多角化を進めたが、目立った成果を出せなかったことも反発を強めた。旧三越と伊勢丹での待遇差も重なり、「社内が一枚岩になれなかった」(三越伊勢丹HD関係者)。
三越伊勢丹HDでは過去にも、お家騒動が勃発している。旧三越で1982年に起こった「三越事件」だ。当時社長だった岡田茂氏の強引な経営手法に不満がくすぶる中、岡田氏の女性問題と不正な利益供与の疑惑が浮上。取締役会での解任決議につながった。
もっとも、今回のトップ交代は、不正疑惑を背景にした過去のお家騒動とは異なる。問題を引き起こしたトップが交代すれば、それで解決というわけにはいかない。対立を引きずり社内が一つにならなければ、新経営陣が5月にも発表する新しい構造改革の実行にも支障を来しかねない。(大柳聡庸)