EV開発激化、出遅れは致命傷 日産新型リーフの技術は「どのメーカーもしのぐ」
■EV開発激化、出遅れは致命傷
日産自動車は6日、電気自動車(EV)「リーフ」を約8年ぶりに全面改良して10月2日から発売すると発表した。デザインを一新したほか、大容量のリチウムイオン電池を搭載し、1回の充電で従来モデルの約1.4倍となる400キロを走行できるのが特徴だ。価格は315万360円から。月間販売目標は2000~3000台と、現行の2~3倍を目指す。
新開発のバッテリーの採用で、電池容量を現行比約1.3倍の40キロワット時に増やした。デザインも全面的に見直し、現在の丸みのあるボディーから低重心で鋭角な外装に刷新した。
アクセルペダルを緩めると自動的にブレーキが作動する仕組みを採用。日常使いでは、ほぼ9割の減速をアクセルペダルのみの操作で行える。高速道路での同一車線の自動運転機能に加え、ボタン1つで自動的に駐車が行える機能も搭載した。
日本での投入を皮切りに米国、欧州でも来年1月に売り出す予定だ。千葉市美浜区の幕張メッセで開いた発表会で、西川広人社長は「世界が本格的なEV時代を迎える中、日産の技術の粋を詰め込んだ新型リーフは素晴らしい仕上がりになった」と胸を張った。
一定販売義務づけ
日産が最先端の自動化技術を全て網羅した新型「リーフ」を投入するなどEVの開発競争が一段と激しくなってきた。中国や米国など世界各国で、環境対応車の一定販売をメーカーに義務づける規制が強まる中、対応に後れを取れば致命傷となりかねず、専門部署の設置や他社との提携で弱点を補う動きも活発になっている。
「各社のEV投入の動きを歓迎する」。日産のダニエレ・スキラッチ副社長は6日の発表会で、市場参入が相次ぐ現状にこう余裕を見せた。今回、新型リーフに搭載した最新技術は「どのメーカーもしのぐ」と絶対的な自信を持ち、新規参入が増えて市場が広がるほど、シェアが高まるとの打算があるためだ。
実際、新型EVの投入が世界で活発だ。米EVメーカーのテスラは現行車より価格を抑えた「モデル3」の納車を7月から開始。ホンダも8月に新型EVを米国で発売し、2018年には中国でも新型を投入する。ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は25年までに30車種以上のEV、ダイムラーも10車種超の電動車両を投じ販売を強化する。
電池性能の向上
EV対応を急ぐのは電池性能の向上で1回の充電で走れる距離が長くなった上、各国で厳しくなる環境規制に対応するためだ。米カリフォルニア州では環境対応車の一定割合の販売をメーカーに義務付ける規制が18年モデルから始まり、中国でも同様の規制が早ければ18年に適用される。欧州ではフランスと英国が40年までにガソリン、ディーゼル車の販売を禁止しEVの普及拡大を決めた。
こうした世界的な規制強化の中で、各国政府が普及を期待するEVでの出遅れはメーカーの今後の競争力を左右しかねず、対応強化が急務だ。水素で走る燃料電池車を次世代車の本命に位置づけるトヨタ自動車も昨年12月にEV開発を担う社長直轄の組織を発足。8月にはマツダと資本提携しEVの共同開発に乗り出すことを発表するなど、EV競争の勝ち残りに向け、合従連衡の動きが広がってもおかしくない状況にある。(今井裕治)
■自動車各社のEV戦略
・トヨタ
資本提携するマツダと共同開発。中国で2019年に量産開始
・日産
新型「リーフ」投入。中国では開発合弁会社を設立し19年に新型を発売
・ホンダ
8月に「クラリティ」を米国で発売。中国では18年に新型を投入予定
・マツダ
トヨタと共同開発。米国で19年に投入予定
・SUBARU
米国などで21年に投入予定
・米テスラ
低価格の「テスラ3」の納車を開始
・独フォルクスワーゲン
25年までに30車種以上を投入予定
・独ダイムラー
25年までに電動化車両を10車種以上投入
・独BMW
今後発売する全てのブランドとモデルに電動化したモデルを設定
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