(3完)「風土的なもの感じられても仕方ない」 不正はBtoBに集中

神鋼会見詳報
性能データの改竄問題などで会見し、頭を下げる神戸製鋼所の川崎博也会長兼社長。左は勝川四志彦常務執行役員=13日午後、東京都港区(飯田英男撮影)

 《神戸製鋼所の不正をめぐる質疑応答は、1時間を超えてなお続いた。川崎博也会長兼社長は企業文化をただす質問に、「風土的なものを感じられるのも仕方ない」とうなだれた》

 --社内で問題が発覚してからすでに1カ月半たっているが、現時点で原因や対策は考えられないのか

 川崎博也会長兼社長「原因や対策をまだ考えていない、ということはない。たとえば本社部門のマネジメントに問題があったと考えている。また現物監査をどうしたのか、工程余力はどうだったのか…。1カ月以内に原因分析と対策をまとめるよう経産省から指示されたので、鋭意進めたい」

 --トップとしての反省を聞きたい

 川崎氏「鉄鋼事業部門は民民契約に関する自主点検も始めさせ、それを本社で監査するという組織を4月に始めた。それなのになぜアルミ・銅事業では適用しなかったのか、それも要因の一つだと考えている。私自身の判断も原因の一つだと推測している」

 --不正の背景に納期や作り直しにかかるコストなどのプレッシャーはなかったか

 川崎氏「ないとはいえない。上からは指示していないが、お客さんのニーズに対する生産工程余力、検査行程の自動化などが十分だったのか、現在そこを調べている」

 --株価でみると神鋼の企業価値は4割低下した。現経営陣に回復できるのか

 川崎氏「そう信じて、足元の原因分析と対策の精度を高めたい」

 --鋼線などは「安全性に問題ない」との説明だが

 勝川四志彦常務執行役員「納入先からそういうお話を頂いている。その他の製品についてはまだ、そういうお話を頂いていないという整理だ」

 内山修造ものづくり推進部長「改竄前の生データを顧客に提供し、確認を進めている」

 川崎氏「生データで顧客に判断していただいている」

 --海外自動車メーカーにも製品を納入している。ユーザーの不安を解消する責任をどう考える

 勝川常務執行役員「顧客(納入先)と協力しながら、必要なデータを提供して確認している。当社はサプライチェーンのもっとも上流に位置しており、製品が複雑な加工を経てどんな形で最終消費者に渡っているか、すべて把握するのは難しい。顧客と相談しないと確認できない」

 --どのメーカーに納入しているのか、公表できないのか

 同「取引上の守秘義務があるし、まだ調査が続いている」

 --不正の範囲は広汎だ。神戸製鋼グループ自体に不正を行う土壌があるのではないか

 川崎氏「神戸製鋼グループのビジネスは、鉄鋼もアルミ・銅も『BtoB』、つまり半製品をメーカーに売るビジネスだ。一方で、機械事業の建設機械などは『BtoC』、消費者向けの完成品を売っている。まだ調査中だが、BtoCの部門では不正が起きていない。そこに原因の本質があると思う。深掘りが必要だ」

 --今回の不正に限らず、問題が繰り返されている。企業文化に問題があるのではないか

 川崎氏「風土的なものを感じられるのも仕方ない。繰り返しになるが、1カ月以内に原因・対策をまとめるのでご理解を頂きたい」

 《1時間24分の会見を終えた川崎氏ら3人は、再び深々と頭を下げて会場を後にした》(完)

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