イーサポートリンク ITで業者の共有インフラ構築

 
イーサポートリンクの堀内信介社長

 ■国内唯一、農産物サプライチェーン

 生産者の高齢化と後継者不足、増え続ける休耕地、カロリーベースとはいえ低い食料自給率-。日本の農業を取り巻く環境は厳しい。その元凶の一つに情報不足や情報の偏りがある。そもそも日本の農産品には、工業製品のようなサプライチェーンがない。需給や情報面で生産者と消費者をリアルタイムに結ぶ仕組みが事実上ないのだ。情報システム会社のイーサポートリンクは、こうした課題にバナナやパインアップル、キウイといった輸入青果物の商物流とお金の流れを管理するシステム開発で培ったノウハウを投入。ビジネスインフラを提供することで、国産青果物の世界に一石を投じようとしている。

 ◆情報整理のムダ解消

 「これが国内唯一の生鮮青果物のサプライチェーンシステムです」

 イーサポートリンクの堀内信介社長が普及を目指す“主力商品”「イーサポートリンクシステム」は、生鮮青果物の生産から小売り・量販店までを一元的につなぐITシステムだ。このシステムで結ばれた事業者は同じ情報を共有し、「今どこに何がどれだけあるのかを把握できる」ようになる。

 実は農産品の世界では、流通の各段階、企業ごとに受発注システムが構築され、しかもそれらは個別に稼働し、それぞれは分断されている。このため、流通の段階ごとに情報整理のためのムダなコストが発生。全体が見えないことによるロスの発生も日常的だ。

 こうした中で同社は、流通大手のイオングループに各店舗と納品業者を結ぶ電子データ交換(EDI)システムを提供している。これは、農水畜産物や日用品を対象にする国内最大規模の生鮮EDIシステムでもある。

 同社はこうした事業で培った技術やノウハウを活用し、国産農産物全体をカバーできるサプライチェーンを構築しようと考えた。

 すでに365日17時間のオペレーションに対応可能な体制も構築。今後この機能を、農協や農業法人にも提供し、農業関係者の共有インフラとすることで生産者にとっても有益なプラットフォームに育てたい考えだ。

 ◆農政にも好影響期待

 一方で、同社は農業生産者向けにはスマートフォンを活用した栽培履歴管理システム「農場物語」も提供。全国約5000の生産者が利用を始めている。今年3月には、オーガニック農産品の販売会社にも資本参加。「自らも生産ノウハウの蓄積を進めるとともに、その水平的な活用も目指す」(堀内社長)という。

 こうした一連の取り組みは、改革を急ぐ日本の農政にとっても好影響が期待できそうだ。

 消費者のニーズが生産者に伝わる。消費者に商品を手渡す小売事業者が生産者の状況を把握した上で商品計画を立案する。日本の農業は、こうしたビジネス環境を整えることができるのか。「全ては生産者と生活者のために」という理念を掲げるイーサポートリンクの挑戦が注目されている。

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【会社概要】イーサポートリンク

 ▽本社=東京都豊島区高田2-17-22

 ▽設立=1998年10月

 ▽資本金=27億2100万円

 ▽従業員=228人(連結ベース、2017年5月末時点)

 ▽売上高=46億900万円 (同、17年11月期予想)

 ▽事業内容=生鮮青果物のサプライチェーンシステム提供、業務受託。農業支援に関する事業など