【高論卓説】欧中主導のEVシフトに“抵抗”必要 日本メーカーは「二面戦略」で挑め
■内燃技術磨き再投資を
世界的に電気自動車(EV)の普及を加速化し、内燃機関の販売禁止を早めようとする動きが顕著となっている。英国、フランスでは2040年をめどに、インドは30年までに内燃機関の販売禁止を方向性として明らかにしている。この流れを加速化させるような政策の検討が中国で開始され、インドネシアでも動きが始まった。インドネシアのエネルギー・鉱物資源省は、化石燃料を動力源とする自動車と二輪車の販売を40年までに禁止する方針だ。
「EVシフト」を先導するのは、欧州と中国だ。ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル排ガス不正に端を発し、欧州ではディーゼル車に対する不信感が爆発、大気汚染が社会問題化して深刻な政治問題となった。パリ協定に伴う温暖化ガス削減を目指した動きも加わり、企業平均燃費規制の達成に向けて、欧州の自動車メーカーは電動化を加速化せざるを得ない状況である。
この流れを加速化させようというのが、中国の新エネルギー車(NEV)政策だ。「自動車強国」を国家戦略として掲げ、世界のEVや、家庭で充電できるPHEV(プラグイン・ハイブリッド車)のバッテリーや主要コンポーネントの供給とEV需要を世界に先駆けて先導する考えである。
中国政府高官は内燃機関の販売を禁止する政策立案に着手していることをほのめかすなど、一気にNEV普及を加速化させ、内燃機関中心の日本の自動車産業の国際競争力を封じ込む意気込みにある。
ブランドとエンジンやトランスミッションの技術力に劣る中国自動車メーカーは、現状では世界の市場に打って出ることは難しい。EVシフトを進め、コモディティー化が進むなら、技術とブランドの障壁を乗り越え、中国自動車産業を念願の輸出産業に育成させることも可能となってくる。
世界のEVシフトに対し、日本の国内産業はどう対応すべきなのか。充電問題、インフラ整備などEVが有する構造問題も非常に大きい。現在のEVブームには、航続距離とコスト低下の話ばかりに目が行き、利便性、消費者の受容性や社会コストの論点が欠けている。それほど簡単にEV化が実現するかは不透明だ。
現在の欧州・中国主導の電動化戦略に安易に迎合することは、欧州・中国の産業政策の思うつぼだろう。戦略を持ったEV化への対処を見据える重要性が高まっていると考える。将来どこかのタイミングで来る電動化に向けた構造対応は重要だが、EV化そのものを遅らせる内燃機関を磨き込む努力も忘れてはならない。
内燃機関の競争力を高めれば、ハイブリッド化でさらにその競争力は上がる。結果としてEVシフトへの抵抗力となる。
しかし、その戦い方を変えていく姿勢の変化が必要だ。技術力に溺れていては、本当に逆転されるリスクもあるだろう。持ち前の内燃機関やハイブリッドの技術力に溺れず、賢くもうけ、その成果を来たるべき技術革新の先端技術に再投下することが必要だ。
欧州では内燃機関への投資マインドは後退している。エンジン、トランスミッションなどの製品、コンポーネントへの引き合いは日本に向かっている。この仕事を積極的に取り込んで、賢くもうけ、その成果を将来の業容転換にきっちりと再投資していく。慌てない冷静な「二面戦略」こそが必要ではないか。
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【プロフィル】中西孝樹
なかにし・たかき ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト。米オレゴン大卒。山一証券、JPモルガン証券などを経て、2013年にナカニシ自動車産業リサーチを設立。著書に「トヨタ対VW」など。
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