【広報エキスパート】ファンケル どんな状況でもきちんと情報発信、目指す「正直品質。」
□ファンケル 執行役員社長室長(広報、IR、秘書担当)・松本浩一氏
--4年前に池森賢二名誉会長が経営に復帰しました
当社の創業の原点は、世の中の「不」の解消です。1970年代後半、化粧品公害が社会問題となり、90年代には日本人の食生活の変化などから生活習慣病が問題になりました。創業者の池森は、こうした世の中の「不安」「不満」「不便」といった「不」のつく事柄を解消するため、無添加化粧品や栄養補助食品(サプリメント)を世に送り出してきました。業績が順調に推移していきましたが、2003年以降は低迷期が続きました。特に当社が業界のパイオニアだったサプリメント事業は、大手食品メーカーや医薬品メーカーが参入することで競争が激化し、シェアを落としていました。そこで創業者にしかできない改革を、スピード感をもって行い、ファンケルらしい経営を取り戻そうと復帰しました。
--手掛けたことは
まず原点に返り、お客さまの視点に立った商品開発に注力しました。研究開発分野にも積極的に投資を行いました。また店舗スタッフのモチベーションアップを目的に、給与のベースアップも実行しました。こうしたことを早々に決断できたのは創業者だからだと思います。15年に開催した株主総会では、「現状維持ではいずれ会社は倒産に向かう。今、思い切った広告投資を行い、もう一度成長軌道に戻さなければならない」という強いメッセージを発信しました。
--その後、経営は順調に回復しています
中期経営計画(15~17年度)では、従来の2倍の費用を投じる戦略的な広告投資、広告効果を最大化するための卸販売の拡大などを基本戦略に掲げました。化粧品事業はドラッグストア向けの卸販売の伸長、60代以降のマチュア世代向けの新ブランド「ビューティブーケ」の発売などにより、売上高は2期連続で過去最高を更新しました。サプリメント事業も、中高年の目の健康のための機能性表示食品「えんきん」や食事の糖や脂肪の吸収を抑える「カロリミット」などが好調に推移し、V字回復しています。
--広報として変わったことは
どのような状況に置かれても会社の姿勢、実態をきちんと社内外に発信することが重要であることを改めて痛感しました。昨年6月、新たなスタンスメッセージ「正直品質。」を制定しました。これは当社グループの、ものづくりやサービスなどへの思いと姿勢を示したものです。広報も、常に外の目を持って正直に社会と向き合い、企業の姿勢をしっかり伝えていくことが大切だと思っています。
--社長室の体制は
メンバーは総勢13人。広報7人、IR2人、秘書4人です。今、商品広報とともに、働き方改革など企業広報に関する取材や情報発信が増えています。65歳以上でも勤務できる雇用区分「アクティブシニア社員」新設の際は、多くのメディアに取り上げられました。今年4月に島田和幸が社長に就任し、全社方針として「オール・ファンケル、ワン・ファンケル」を掲げました。研究から販売までを一気通貫で展開するファンケルの総合力、独自価値を全社一丸となって発揮することで収益性を向上させるというものです。広報もその実現に向けて、より一層社内外にしっかりと情報発信していきたいと思っています。(エフシージー総合研究所 山本ヒロ子)=随時掲載
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【プロフィル】松本浩一
まつもと・こういち 1994年早大法卒、旭硝子入社。関西工場、硝子建材事業本部などを経て、99年ファンケル入社。総務部長、社長室長、執行役員カスタマーサービスセンター長などを経て、2016年から現職。
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