ブレイゾン・セラピューティクス 脳神経疾患の治療薬開発に着手
■ナノマシン利用
東京医科歯科大学発のバイオベンチャー、ブレイゾン・セラピューティクス(東京都文京区)は、薬剤を包む微粒子を、血糖値の変動を利用して脳に送り込む技術を基に、脳神経疾患治療薬の開発に乗り出した。戸須眞理子社長は「おおよそ5~8年後に人への臨床試験開始を目指す」考えだ。
新技術は、東京医科歯科大の横田隆徳教授や東京大学の片岡一則特任教授らの研究チームが開発した。同社はこれまで、片岡教授らの研究成果を基に、ナノ(1ナノは10億分の1)メートル級のカプセル「ナノマシン」による薬剤伝達技術を活用した脳神経疾患治療薬の開発に取り組んできた。
しかし、薬剤の送達を妨げる生体バリア機能「血液脳関門」(BBB)が脳の血管にあるため、薬効成分のほとんどが通り抜けられなかった。
今回、片岡教授らは、食事などを通じて血液中の糖の一種、グルコースの濃度変化を利用してBBBを通過するナノマシンを開発した。ナノマシンとグルコースの運び屋となる物質「グルコーストランスポーター(GLUT1)」が脳血管内で結合し、脳血管内皮細胞内をナノマシンが移動。同細胞を脱出する際にGLUT1からナノマシンが切り離され、そのままニューロン(神経細胞)に到達する仕組みだという。
既存の薬が脳に届く確率はわずか0.1%だが、この技術を使ったマウスの実験で、到達率は4~6%に上がったという。
認知症や鬱病、統合失調症といった脳神経疾患治療薬の開発は大きな課題となっているが、今回の技術で脳神経疾患治療薬の開発ができれば、鬱病だけでも100万人以上とされる患者にとって福音となるという。
片岡センター長は「脳腫瘍などの脳血管疾患への適用も考えられる。脳疾患に新たなアプローチでの治療法が提供できる」とナノマシンの今後に期待を寄せている。
2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると予測される中、脳神経疾患治療薬の市場規模は拡大傾向にある。BBB突破薬の世界市場規模は30年に35億ドル(約4000億円)との試算も出されている。
国内外の大手製薬会社から共同研究開発の申し出が相次いでおり、戸須社長は「他社などとも連携してBBB突破技術を世界に広げたい」と話している。
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【会社概要】ブレイゾン・セラピューティクス
▽本社=東京都文京区本郷3-42-1 三友ビル201
▽設立=2015年10月
▽資本金=5925万円
▽従業員=4人
▽事業内容=中枢神経領域を対象にした医薬品、診断薬、研究用試薬などの研究開発
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