風通し悪い工場「内部通報機能せず」 現場の感覚とギャップ
日産記者会見・詳報(2)無資格検査問題の原因究明と再発防止策に関し、日産自動車が17日午後4時半から、横浜市の本社8階で開いた記者会見。西川広人社長と山内康裕CCOが、集まった報道陣200人超を前に、国土交通省へ同日提出した報告書をベースに約40分間にわたる説明を行い、質疑応答へと移った。主なやり取りは次の通り。
--以前の会見で「人手不足が要因ではない」と話したが
西川氏「無資格検査が習慣化したのはかなり古いことであり、『人手不足が原因で始まった』とは決めつけにくい。むしろ1980年代以降、当社の生産は右肩下がりだった」
「一番大きな要因は、製造現場の『そこまで(の厳格さは)必要ないのではないか』という(基準と、完成検査員を任用する際の)ギャップを放置したことだったのではないか。完成検査員(候補者)の訓練では、有資格者が2カ月、3カ月にもわたり、へばりついて作業を見守っている。(そうした)現場の感覚とギャップの大きい基準を放置したことが大きいのではないか」
--現場の実態を理解せずに指示し、製造現場がブラックボックス化していたのでは
西川氏「工場は『上意下達』の風土が強く、そうした要因は認めざるを得ない。現場の強みを生かしながら、(工場担当の常務執行役員を増やすなど)管理側の立て直しが急務だ」
--役員の処分については
西川氏「私は10月から月額報酬の一部を自主返納しており、年度末まで続ける。しかし(役員の処分については、信頼回復や再発防止などの)挽回が先だ。われわれは執行側なので、取締役会から指示を受けることになる」
--「内部告発をしても聞いてもらえないのでは」という現場の空気を、どう改善するのか
西川氏「風通しの悪い職場、現実的でない仕組み、上層部が動かない、そうした環境では内部通報の仕組みも機能しにくい。それが日産の全社ではないと思うが、工場に関しては反省するところが大きい。係長クラスの意見を聞き、また(品証課長などに)登用する、そうしたところから対策を取っていく」
山内氏「(無資格検査に関する聞き取りで)大半の完成検査員が『内部通報が必要とは思わなかった』と答えた。内部通報の仕組みが周知徹底されていないことが分かったので、さまざまな取り組みで徹底したい」
--カルロス・ゴーン会長は、この問題をどこまで把握しているのか。「(数値目標で経営管理を行う)『ゴーン流』が遠因」ともいわれているが
西川氏「(調査した西村あさひ法律事務所が)会長への聞き取りも行っている。事の性質上、その場に私は入っていない。会長は取締役会の議長であり、問題についても私が定期的に報告している。今の状態を立て直すのは、私の責任だ」
「彼(ゴーン会長)自身がリーダーシップの強さを自覚しており、下の意見を聞くように心がけていた。『それなのになぜ、この問題では声を上げてもらえなかったのか』というのが、彼にとって大きな疑問だと思う。私なりに思うのは、そうしたことが起きやすい風土があった。(現場と管理者層、本社の間の、認識の)まだらの中で、そうしたことが起きやすかったのだと考えている」
■詳報(3)ゴーン氏不在、西川社長「収拾は私の責任」 に続く
関連記事