日産、人手不足と低い意識原因 無資格検査問題の報告書を国交省に提出

 
無資格検査問題の報告書を国交省に提出し、記者会見で謝罪する日産自動車の西川広人社長(手前)=17日午後、横浜市の同社本社

 日産自動車は17日、新車の無資格検査問題を起こした原因の究明と再発防止の対策をまとめ、国土交通省に報告書を提出した。不正は最も古くて、38年前の1979年から本体の栃木工場(栃木県上三川町)でされていた可能性があり、正規検査員の不足と制度への規範意識の薄さが原因だったと結論付けた。記者会見した西川広人社長は謝罪し、自身の報酬の一部を自主返納したと説明した。

 西川氏は不正に関し「係長以下で行われた現場の習慣」で、カルロス・ゴーン会長や西川氏ら経営陣が認識していたと認めず、明確な経営陣の処分に踏み込まなかった。ゴーン氏は会見に姿を見せなかった。

 石井啓一国交相はこれに先立つ閣議後の記者会見で、報告書を踏まえ「厳正に対処したい」と述べた。刑事告発も含め対応を検討する。メーカー自身が完成検査をする「型式指定」の取り消しや停止に踏み切ることも想定され、日産は出荷停止などに追い込まれる可能性もある。国交省の奥田哲也自動車局長は西川氏に「由々しき事態で極めて遺憾だ」と懸念を伝えた。

 報告書によると、無資格検査は90年代には常態化していた。主力の追浜工場(神奈川県横須賀市)では、昨年に小型車「ノート」の生産を移管したことで業務が繁忙化し、無資格検査も増えた。グループのオートワークス京都(京都府宇治市)では不正は確認されなかった。

 9月にあった国交省による工場への立ち入り検査では、事実と異なる説明をしたり、関係資料の一部を削除したりするなどの隠蔽(いんぺい)行為があった。

 再発防止策として、正規検査員を80人以上増やし、検査スペースに無資格者が出入りできないよう顔認証で管理することを盛り込んだ。西川氏は一部月額報酬の自主返納を10月から来年3月まで続ける。金額や他の役員の取り組みについては具体的には明らかにしなかった。

 問題の検証は弁護士でつくる第三者チームに依頼。ゴーン氏を含む役員12人と、検査業務に関わる役職員ら490人に聞き取りを実施した。