日産経営陣、求心力低下は不可避 本社と生産現場に「壁」…責任曖昧のまま
日産自動車が発表した無資格検査問題の調査結果からは、本社と生産現場との間に「壁」があり、意思疎通が不十分だったことが明らかになり、経営の不作為が改めて浮き彫りになった。また、カルロス・ゴーン会長が社長を務めていた時代から問題は続いており、拡大路線を進める中で完成検査員の人員不足が慢性化していた可能性が指摘された。経営責任は曖昧なままで、経営陣の求心力低下は不可避な情勢だ。
報告書は問題の背景として、「現場と本社の管理者層との間に距離があり、管理者層が問題を把握し対処することを困難にした」と指摘した。日産は西川広人社長が「是正した」と公言した後も無資格検査が続いていたことが発覚し、国内販売向け車両の生産・出荷停止につながって問題が深刻化したが、その背景に社内の意思疎通に問題があったことが明確になった。
必達目標「コミットメント」を掲げることで求心力を高めてきたゴーン氏の経営手法が今回の問題につながったとの見方について、西川氏は17日の会見で「それ(ゴーン氏が最高経営責任者に就任した2001年)以前から常態化していた」と強調し、直接の原因としては否定した。だが一方で、「目標だけ独り歩きすることがある」として、現場が目標の達成のために独自の“効率化”を優先した可能性を示唆した。
西川氏は、10月から来年3月まで役員報酬の一部を返上することを表明したが、経営責任を明確化する意向は示さなかった。不祥事の調査結果発表での対応としては異例だ。
ただでさえ、日産の経営は曲がり角を迎えている。17年3月期までの6年間の中期経営計画ではほとんどの目標が未達に終わり、ゴーン氏のコミットメント経営は見る影もない。営業利益は今期まで2期連続の減益見通し。1倍を割り込むと割安とされる株価純資産倍率(PBR)は0.82倍と、自動車大手の中では最低水準で、株式市場の評価も低い。重視してきた米国市場では、販売奨励金による値引き競争で収益環境は悪化。好調だった国内販売も無資格検査問題でブレーキがかかっている。
経営責任を曖昧にした姿勢は、工場や本社の従業員だけでなく、販売会社や部品メーカーを含めたグループ関係者からの不信感を増幅させる可能性がある。西川氏は「挽回(ばんかい)の機会をいただきたい」と述べたが、前途は多難だ。(高橋寛次)
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