【ビジネスのつぼ】ソニーモバイル、新ロボットに追求した「人らしさ」 ライバル不在、スマホに次ぐ稼ぎ頭になるか

 
エクスペリア・ハローの開発に携わった(左から)城井さん、伊藤さん、倉田さん=東京都品川区

 □ソニーモバイルコミュニケーションズ

 ■コミュニケーションロボ、まるで家族の一員

 一見したところ流行の「AI(人工知能)スピーカー」のような黒色の円筒形の機器だ。だが、「ハイ、エクスペリア」と呼びかければすぐに返答し、逆に話しかけてくることもある。しかも、生き物のように表情をころころと変えながら。ソニーはこのロボットが「家族の一員」になるだろうという。一体どんなロボットなのか。

 自ら能動的に動き発話

 「一言で言えばコミュニケーションロボットというものです」。開発に携わったスマートプロダクト部門の副部門長、伊藤博史さんはそう説明する。

 AIスピーカーは人がまず命令を出す必要があり、人の指示で初めて答える機器だ。だがハローは自ら能動的に動いたり発話したりする点が全く異なるという。

 「例えば、朝起きてくるとリビングにいるハローが顔を認識し、『おはよう伊藤さん』と話しかける。そうして双方向の対話ができるようになるんですね」(伊藤さん)

 コミュニケーションロボットという新たなカテゴリーの新製品だけに、目下のところライバルは存在しない、と開発陣は胸を張る。

 さて、詳細の機能は大別して(1)コミュニケーション(2)インフォテイメント(3)見守り-の3つで、いずれも人工知能を駆使している。

 例えば母親が外出先から「パパ、洗濯物取り込んでね。マナブ君、宿題も頑張ってよ」と無料対話アプリ「ライン」を通じてハローにメッセージを託す。ハローは画像認識機能によって家族の顔を見分け、家事に関する部分をパパに、宿題はマナブ君にそれぞれ伝える。

 インフォテイメントはニュースや天気予報などを知らせるもので、リマインダー機能にも特徴がある。子供が「おじいちゃんの誕生日を◯月◯日と覚えておいて」と記憶させておくと、その日になれば子供に知らせる。

 いずれもハローから自発的な働きかけがあるのがポイントだ。

 子供の安否確認も

 最後の「見守り」は、外出先の親がラインを通じハローに子供の様子を尋ねると、子供の存在を認識済みのハローが「◯分前に見かけました」と返答し、家族の安否を確かめられる仕組みだ。

 開発陣は、こうした機能をいかんなく発揮するため「リビングのテーブルがハローの置き場所に最もふさわしい」と口をそろえる。家の中心部なら家族全員の認識が容易で、家族をつなぐ“ハブ”として機能しやすい。そうして「家族の一員」に溶け込んでいくわけだ。

 昨今は女性の社会進出が増え家族でもすれ違いが多くなっている。時代が変化し、待たれた機能ともいえるだろう。

 ところで、開発陣が最も腐心したのは、ハローにどう“人らしさ”を備えさせるかだったという。

 つまり家族の一員といってもハローが無機質な機械にすぎなければ、誰もコミュニケーションを取ろうという気にならない。人と機械の対話をどうやって自然なものにするかだが、開発陣が選んだのはハローの感情表現を豊かにすることだった。

 目や頭部の動きを絶妙のタイミングで制御し、「喜ぶ」「すねる」「盛り上げる」など30種類の感情をまるで生き物のように表す。

 特に目については「人の顔のような表情にするため『まばたき』が重要だった」と開発メンバーの城井学さん。「表現方法は目に埋め込んだLEDライトの微妙な明滅。しかし見方によっては『半目』に見えてしまうなど数え切れないほどの失敗作が出た。試行錯誤の連続だった」と振り返る。

 また、話し合っているという感覚を持たせるため、ハローは人と目線が合うよう、やや上目遣いになる角度に設計した。

 ただ今回、ユーザーの好みを覚える機能などの搭載を持ち越している。今後のアップデートで対応することにしており、その意味ではなお成長の余地を残している。

 「ハローはコミュニケーションロボットという分野を育てていくその第一歩だ」。同部門の倉田宜典・エージェント企画開発室長はそう語る。その言葉通り挑戦はまだ始まったにすぎない。(柳原一哉)

 ≪企業NOW≫

 ■スマホに次ぐ稼ぎ頭を育てる

 スマートフォン(スマホ)の「エクスペリア」で知られるソニーモバイルコミュニケーションズの前身は「ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ」だ。2001年、ソニーとスウェーデンのエリクソンによる携帯電話事業の合弁会社として誕生した。

 一部ユーザーからは「ソニエリ」と呼ばれるなど、洗練されたデザインをまとった端末は多くのファンを獲得。その後、合弁を解消し、12年にソニー100%子会社となっている。

 調査会社のMM総研によると、同社の中核事業のスマホは国内市場シェアで12.5%(16年度、台数ベース)で、米アップルのiPhone(アイフォーン)の52.7%に次ぐ2位につける。3位シャープ、4位京セラ、5位富士通と国内勢が続く。

 ただ国内市場はスマホが消費者に行き渡り、大きな成長が見込みにくくなってきた。事業環境が厳しくなる中で、エクスペリア・ハローのようなロボットを同社が手掛けるのはスマホに次ぐ稼ぎ頭を育てる動きと見ることができる。

 一方、本体のソニーは、エレクトロニクス事業などの不調により経営不振に苦しんできたが、近年は構造改革が奏功。18年3月期の連結営業利益の予想を前期比2.2倍の6300億円に上方修正し20年ぶりの過去最高業績を見込む。復権のシンボルとして犬型ロボット「aibo(アイボ)」を復活させ、ソニーらしさも取り戻しつつある。

 ■ソニーモバイルコミュニケーションズ

 【設立】2001年10月

 【本社】東京都品川区東品川4-12-3

 【資本金】30億円(17年3月末時点)

 【売上高】非公開

 【従業員数】非公開

 【事業内容】スマートフォン、スマートプロダクト、スマホ・アクセサリー製品などの開発・製造