【東レのデータ改竄】素材産業で相次ぐ不正 モラル低下、消費者軽視、縦割り…共通の問題も 揺らぐモノづくり

 
東レハイブリッドコードが製品検査データの書き換えを行った件で会見する、東レの日覚昭広社長=11月28日、東京都中央区(寺河内美奈撮影)

 神戸製鋼所と三菱マテリアルに続いて東レ子会社でもデータ改竄が発覚した。素材メーカーの相次ぐ不正からは、現場のモラル低下や消費者軽視、縦割り組織の弊害といった、共通の問題が浮かび上がる。世界有数の技術を誇り、自動車など幅広い産業を支えてきた素材産業が力を失えば、日本のモノづくりの根幹が揺らぎかねない。

 「特別採用という慣習も動機になった」

 東レハイブリッドコード(THC)の鈴木信博社長は28日の記者会見で、不適合製品を顧客の了承を得た上で納入する「特別採用(トクサイ)」と呼ぶ日本独自の商慣行が隠れみのになったとの認識を示した。

 改竄は、歴代の品質保証室長2人が責任者としての権限を使い、検査成績書の承認段階で行っていた。同社は、ほかに関与者はいないとして組織ぐるみとの見方は否定した。

 トクサイの悪用は神戸製鋼と三菱マテリアル子会社でも発覚。契約順守や安全優先の意識が薄れつつあることがうかがえる。

 日本の素材各社は、凋落が目立つ電機に比べると経営が安定している。だが近年はM&A(企業の合併・買収)で世界規模の巨大メーカーが相次ぎ誕生し、中国勢も台頭。押された日本メーカーは、技術頼みの姿勢を強めている。

 東レの不正は、再検査などの煩雑な作業を嫌ったのが動機という。収益確保が難しくなり、技術的なハードルも高まる中、納期順守のプレッシャーを感じていた可能性もある。

 神戸製鋼は、傘下にアルミ・銅など7つの事業部門を抱える。三菱マテリアルは事業別に4つの社内カンパニーを設け、権限を大幅に委譲していた。東レも多くの事業を抱え、子会社を含む事業部間の人事交流はあまりないという。縦割りの組織は閉鎖的な風土を生み、経営陣の監視の目も行き届きにくい。

 さらに、消極的な情報開示姿勢でも3社は共通している。東レの日覚昭広社長は神戸製鋼の問題がなければ今回の不正を公表しなかったとの考えも示しており、消費者軽視の姿勢は批判を集めそうだ。(井田通人)