良質で割安の「リノベ物件」首都圏で急増 薄まる新築へのこだわり
不動産市場で、中古物件を大規模改修し再生販売するリノベーション事業を強化する動きが相次いでいる。マンション開発大手、大京グループの大京穴吹不動産が東京23区内で初めて建物単位のリノベーション物件の販売に乗り出したほか、三井不動産やミサワホームは、耐震性も高める新たな再生建築手法で競争力を高める。首都圏新築マンション価格が高水準で推移する中、良質で割安感のある「リノベ物件」への関心は高まっており、各社の取り組みが一段と活発化するのは確実だ。
消費者ニーズが変化
“おばあちゃんの原宿”として知られる東京・巣鴨。周辺には閑静(かんせい)な住宅街が広がるこの地域の一角で大京穴吹不動産はリノベーションマンション「グランディーノ」シリーズの販売を開始した。総戸数23戸の「グランディーノ駒込」(豊島区)は築20年。元は豊島区の区民住宅だったが、第三者機関による建物診断・調査を踏まえた大規模修繕工事で生まれ変わった。
専有部に新築向けのオリジナルキッチンを導入。共用部にはエントランスベンチや住戸専用の宅配ボックスを設置するなど、新しい機能を追加して付加価値も高めた。そのたたずまいは新築分譲マンションと変わらないが、3.3平方メートル単価は周辺の新築ブランド物件の7割程度とあって注目されている。
駒込の物件はグランディーノシリーズとして4件目。これまでの販売の手応えから、リノベーション営業課の清水一志担当部長は首都圏を中心に「年、数棟ペースで増やしていきたい」と意欲を示す。同社では、マンションの住戸単位分や戸建てを含めたリノベーション事業全体で、2021年3月期に販売戸数を2500戸超まで拡大する方針だ。
不動産経済研究所(東京都新宿区)によると、16年度の首都圏新築マンションの平均販売価格は5541万円とサラリーマンの平均年収の約10倍。地価や建築費の上昇を背景に高値基調が続いている。このため、市場では割安な中古物件の人気が高まっており、首都圏では16年に新築の販売戸数を初めて上回った。その勢いは今年も変わらず、「新築にこだわる傾向は薄れている」(大手不動産販売会社)。
こうした消費者ニーズの変化がリノベ物件の追い風となっており、不動産大手や住宅メーカーも本格的に市場の取り込みを始めている。
三菱地所レジデンスは1棟丸ごとを手掛ける専門ブランドの「ザ・パークリモア」を立ち上げ、東京都港区などで販売。将来はリノベーション事業全体で年間500~600戸、売り上げ200億円の事業規模まで拡大し、収益基盤の多様化につなげる。
東急不動産も「マジェス」というブランドで事業を展開。都心の高級住宅街を対象に物件を厳選する形で進めており、これまでに六本木と元麻布で供給実績がある。「大手建設会社が施工したマンションを中心に、良質な物件が出れば柔軟に対応していく」(古沢繁之取締役)。
一方、三井不動産とミサワホームは、それぞれ「リファイニング建築」と呼ばれる手法で差別化を狙う。同手法は内外装や設備類、間取りなどの変更だけではなく建物自体の耐震性や耐用年数を大幅に向上させ、長寿命化を図る技術。両社はこの技術を持つ青木茂建築工房(東京都渋谷区)と提携した。
提携に基づき、三井不動産は既に2カ所で再生を手掛け、このうち1977年に建てられた練馬区内の共同住宅は、新築工事と比べて70%程度のコストに抑えて再生し、周辺の家賃相場よりも高い水準が見込める物件に変身させた。
また、ミサワホームは千代田区で築36年の専門学校を賃貸マンションに用途変更する工事を進めている。住戸は3.1メートルの高天井やロフト付きのプランを設定するほか、エントランスや内階段などを新設。完成は18年2月を予定している。現在、東京では新国立競技場(新宿区)の建設工事が本格化し、都心では大手町や虎ノ門をはじめとして大型の再開発工事が着々と進むなど、20年の東京五輪を見据えた開発が活発になっている。
資材少なく価格抑制
これに伴い、素材メーカーによる値上げ圧力が強まると見込まれているのが、H形鋼をはじめ生コンクリート、合板といった建設資材で、値上げ分の転嫁で新築マンションは高根の花となる可能性も出てきている。その点、リノベーションマンションは資材の使用量が少なくて済み、価格を抑制できるため「都心部の地価の高いエリアで強みを発揮できる」(大手デベロッパーの担当者)と見込まれる。
東日本不動産流通機構によると16年度の首都圏中古マンションの平均成約価格は3078万円。新築物件のほぼ6割の水準だ。景気拡大が続き新築物件に大きな値崩れ要素が見当たらない市場では、ストック(既存物件)の再生ビジネスに一段と拍車がかかりそうだ。(伊藤俊祐)
■首都圏マンション価格の推移
年度 新築物件の平均販売価格 中古物件の平均成約価格
2011 4557万円 2516万円
12 4563万円 2515万円
13 5008万円 2614万円
14 5088万円 2789万円
15 5617万円 2932万円
16 5541万円 3078万円
※新築物件は不動産経済研究所、中古物件は東日本不動産流通機構の調査
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