東芝、「稼ぐ力」底上げ急務 海外ファンドからの巨額資金調達は「劇薬」…

 
経営再建で揺れる東芝本社が入るビル=東京都港区

 東芝は係争中だったWDと和解したことで、東芝の財務改善に対するリスクは払拭された。ただ、海外ファンドに巨額の増資を引き受けてもらう「劇薬」を飲んだことで、今後は収益面で厳しい視線にさらされるのは必至だ。半導体事業を売却した後の「新生東芝」が生き残るには、稼ぐ力を底上げする具体策を実現できるかが焦点になる。

 物言う株主 どう対応

 東芝は今年3月末に負債が資産を上回る債務超過に陥り、財務改善に向け東芝メモリの売却手続きを進めていた。売却へ残るは、独禁法審査を待つのみとなったが、半導体産業に力を入れる中国当局の審査が長引く可能性がある。

 だが、来年3月末までに売却が完了しなくても、2年連続の債務超過を避け、上場を維持できる算段だ。東芝は11月時点で来年3月末の債務超過額を7500億円とみていたが、今月に計60の海外ファンドを引受先とする約6000億円の第三者割当増資を実施。増資資金で経営破綻した米原発子会社への親会社保証を一括返済すれば、2400億円の税負担軽減による資本増強効果が見込める。東芝メモリの売却益は1兆800億円で、財務はさらに改善し、成長投資に回せるようになる。

 一方で新たな難題を背負い込んだ。増資を引き受けた海外ファンドは利益を確実に出すことを追求するため投資先にシビアだ。旧村上ファンド出身者が設立した投資ファンド「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」が11%超を出資する筆頭株主になるなど「物言う株主」の発言権は強まった。

 現時点では新生東芝が収益面で存在感を増す物言う株主を納得させるのは難しい。2017年4~9月期の連結営業利益は2317億円と過去最高だったが、このうち9割を売却する半導体メモリー事業で稼いだ。売却後の18年3月期は売上高4兆円程度、営業利益で数百億円規模の会社になるとみられる。

 「早期に売上高営業利益率5%を目指す」と財務担当の平田政善専務は強調する。この1カ月余りで、赤字続きのテレビ事業からの撤退やICT(情報通信技術)子会社での人員削減などを矢継ぎ早に決定。18年3月期の構造改革費用を200億円増の600億円に積み増し、一層の合理化に踏み切る構えだ。

 強敵そろう海外市場

 だが、合理化だけでは成長ビジョンは見えない。新生東芝が中核とする社会インフラ事業は収益率が低く、てこ入れが課題だ。東芝はビル設備や水処理システムなどに「モノのインターネット(IoT)」を組み合わせて効率化や省電力といった付加価値をつけ、売り込みたい考え。また、海外売上高比率が3割弱と低いのもネックだ。海外市場の開拓が欠かせないものの、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や日立製作所など強敵ぞろいで一筋縄ではいかない。

 東芝は現在策定中の18年度からの中期経営計画で、成長戦略を明確にする必要がある。甘い戦略だと、物言う株主が株価をつり上げるために主力事業売却や大幅な人員削減などを求めてくる可能性もある。(万福博之)