東芝メモリ、首位サムスン追走 WDとの関係再構築がカギ

 
東芝メモリの四日市工場で建設中の第6棟(東芝提供)

 東芝と米ウエスタン・デジタル(WD)の和解により、東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の売却は独占禁止法に基づく審査以外に障害がなくなった。東芝メモリは、米ファンド主導の「日米韓連合」の傘下で再出発することがほぼ決まり、今後はWDとの協業関係を強化しながら業界首位の韓国サムスン電子に対抗することになる。もっとも、一時は絶縁も覚悟したWDとの関係修復など、経営陣は出だしから難しいかじ取りを迫られる。

 「訴訟などの懸念がなくなり、WDとの協業関係を再構築することで、拡大を続けるメモリ需要を捉え、成長を加速させることができる」

 和解成立を受けて、東芝メモリ社長を兼務する東芝の成毛康雄副社長はそうコメントした。

 主力商品のフラッシュメモリーは、データセンターやスマートフォン向けの需要拡大で品薄状態が続いているが、売却交渉の迷走で東芝メモリの市場シェアは低下している。IHSマークイットの調べによると、2016年通年のシェアが19.5%だったのに対し、17年7~9月期は16.8%にとどまった。一方、サムスンのシェアは4割近くに達し、巨額投資で他社を引き離しにかかっている。

 2位の東芝メモリも四日市工場の新棟や岩手県北上市での新工場建設で対抗する構えだが、売却交渉の長期化が影響して計画は遅れ気味。サムスンに対抗するには、3位のWDと協力して生産規模を拡大し、コスト競争力を高めるのが最も現実的だ。

 だが、国際仲裁裁判所への提訴など、さまざまな手段で自社以外への売却を“妨害”し、東芝を上場廃止の瀬戸際に追い込んだWDとの間には、深刻な感情的しこりが残った。一度壊れた信頼関係を再構築できるかは疑問だ。

 東芝メモリの売却にあたっては、米ファンドのベインキャピタルと東芝、HOYAの株主3社以外に、競合で業界5位の韓国SKハイニックスや、顧客の米アップルなども資金を拠出する。WDの訴訟取り下げ後は、政府系ファンドの産業革新機構や日本政策投資銀行も資本参加する。

 日米韓連合を主導するベインの杉本勇次日本代表は「契約で(SKや顧客は)経営には一切関与できない」と強調するが、協業相手のWDも含め、寄り合い所帯の印象はぬぐえない。特にWDは、SKが東芝メモリの経営に関与することを強く警戒し、東芝との和解が遅れる一因となってきた。契約の存在があるとはいえ、対立の火種はくすぶったままだ。(井田通人)