【茨城発 輝く】ドメーヌ水戸 県産ワインブランド化、市街地の醸造所も個性

 
水戸市の幹線道路沿いにあるレトロな建物「泉町会館」。この中に「ドメーヌ水戸」の醸造所がある

 水戸市の中心市街地を貫く幹線道路の国道50号。「ドメーヌ水戸」のワイナリーは、この国道沿いのレトロな建物「泉町会館」の中にある。一歩足を踏み入れると、醸造設備やワイン瓶が所狭しと並べられ、芳醇(ほうじゅん)なブドウの香りが立ちこめている。

 2015年に設立されたドメーヌ水戸は昨年、初の水戸市産ワインを製造した。地域活性化の一環として始めたワイン造りだが、評判は上々だ。宮本紘太郎社長は「『醸造所が市街地にある』という利点を生かし、ワイナリーを水戸の新たな観光資源にしたい」と意気込んでいる。

 ◆疲弊した街に光を

 父・和幸氏とともに水戸市内で酒屋を経営する宮本社長は、11年の東日本大震災で被災し、疲弊した水戸の中心市街地を目の当たりにして、「町の真ん中にある泉町会館をシンボルにした地域活性化策はないか」と考えていた。

 大学卒業後、約10年にわたって東京都にあるワイン輸入・販売会社に勤務していた宮本社長は、経験を生かしたワイン造りセミナーやワークショップなどの開催を思いつく。地元商店会の店主らと話し合い、「ワイナリーを会館に整備して、県内外の人にワイン造りに参加してもらう」という結論にたどり着いた。

 その後、税務署から「酒類製造には法人格が必要」と指導を受け、ドメーヌ水戸の設立を決意。13年ごろから醸造設備の整備や酒類製造免許の取得などを進めるとともに、地元の飲食店や酒屋の経営者ら10人から出資を受け、約2年で会社設立にこぎつけた。

 昨年8月には水戸市内の農学校や茨城県西部で栽培しているワイン用のブドウ約6トンを使った県産ワインの醸造を開始。水戸市産のワインも含め、赤ワインを中心に約5000本を出荷したところ、今年4月までにほぼ完売した。

 ◆ツーリズムを準備

 宮本社長が現在取り組んでいるのは、山梨県や長野県で盛んに行われている周遊型の「ワインツーリズム」だ。参加者は県内をバスで巡り、ブドウを栽培している畑で収穫体験をした後、そのブドウを使ってドメーヌ水戸のワイナリーでワイン造りを体験する。数カ月後、出来上がったワインは瓶詰めされて参加者の元に届けられる。宮本社長は「醸造所が東京都などの大消費地から近く、市街地にあるというのは(ワイン造りが盛んな)山梨県などにはない長所。首都圏のワイン好きを水戸に呼び込みたい」と話す。

 ドメーヌ水戸が行うワインツーリズムには、1口1万円からの寄付「ひとくちオーナー」の特典として参加することができる。毎年2月から募集を開始しており、収穫、醸造体験のほか、その年に自分が収穫したブドウからできたワイン2本が贈られる。宮本社長は「茨城ではいろいろな農作物が作られている。県内の農家とコラボして今までにないワイン体験を提供したい」と語っている。

 宮本社長が今後目指すのは、茨城県産ワインのブランド化だ。体験として楽しめるだけではなく、商材としても価値のあるワイン造りをしていくという。近年のワインブームを反映して全国には多くの醸造所があり、ブランド化に求められるのは、他のワインにはない“個性”だ。社名になっている「ドメーヌ」は、仏ブルゴーニュ地方でブドウ畑を所有し、栽培から醸造、瓶詰めまでを自分たちで行う生産者を指す。宮本社長は「ドメーヌのワインは個性的なものが多い。将来的には畑を所有し、ドメーヌ水戸を名実共に『水戸のドメーヌ』にしたい」と将来を見据える。(丸山将)

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【会社概要】ドメーヌ水戸

 ▽本社=水戸市栄町1-1-22 ((電)080・4405・2474)

 ▽設立=2015年

 ▽資本金=50万円

 ▽売上高=600万円

 ▽事業内容=ワインの製造販売、イベントの企画運営

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 □宮本紘太郎社長

 ■「気軽に行けるワイナリー」アピール

 --実家は江戸時代から5代続く酒屋を営んでいる

 「高校生くらいから、『将来は継ぐことになるな』と考えていた。ドメーヌ水戸設立の時期は二足のわらじで大変だった」

 --大学では醸造学科に所属していた

 「学科には実家が酒屋や酒造業の学生が多かった。3年生の終わりに専攻を決める際、ワインを研究している教授のゼミに所属した」

 --なぜ、ワインに興味を

 「大学生の時も、今と同じようにワインブームだった。だから『ワインに詳しいとかっこいい』というのがあって(笑)。仲間と勉強会などをやるうちに好きになった」

 --卒業後はワインの輸入・販売会社に就職した

 「入社して学んだのは、ワインは他のお酒に比べて高い付加価値を持たせられるということ。洋服や宝飾品のようなブランド価値を持つワインがあり、特別な贈り物としても使われる。当時は自分がワインを造るとは思わなかったが、ワインビジネスの面白さを知ったのは良かった。大学ではワインの造り方や味わいを勉強して、ビジネスの視点は全く持っていなかった。それに、ワイン生産者と話す機会を持てたことも大きかった。生産者のワイン造りに対する考え方と、その土地の風土や文化が合わさってワインに個性が出ることを学べた」

 --心がけていることは

 「安心して飲めるワインを造るためにブドウ農家とのコミュニケーションは欠かさないようにしている。味については優しい飲み口を出せるよう作り込みすぎないことを心がけている。ワインは繊細なので、消費者の元までおいしく届くよう品質管理の徹底も大切にしている」

 --今後の展望は

 「水戸を『ワイナリーがある町』として売り出すとともに、ドメーヌ水戸を『気軽に行けるワイナリー』として認知度を高めたい」

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【プロフィル】宮本紘太郎

 みやもと・こうたろう 東京農大卒。1999年東京都内のワイン輸入・販売会社に入社。2009年実家に戻り、家業である酒屋の経営に携わる。シニアソムリエの資格を持つ。40歳。茨城県出身。

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 ≪イチ押し!≫

 ■「水戸ルージュ」エレガントな味わい

 ブドウの栽培からワインの瓶詰めまで全て水戸市内で行う赤ワイン「MITO ROUGE(水戸ルージュ)」は、渋みの少ないエレガントな味わいに仕上がっている。

 市内の農学校で栽培、収穫した「アーリースチューベン」という早生種を使った一品で、黒みを帯びた濃厚な赤色と、ベリー系の果実を想像させる濃縮された甘い香りが特徴。一方、味わいは柔らかく、渋みが強くないため、幅広い料理と一緒に楽しめる。11月に開いたお披露目パーティーでは参加者から「飲みやすい」「香りが良い」と評判だったという。

 11月から来年にかけて約1000本の出荷を見込んでいる。現在は市内の百貨店や酒店のみで販売しているが、宮本社長は「いずれは全国に売り出したい」と意気込む。アルコール度数8%。750ミリリットル入り2500円。