コンビニ流で駐車場を革新 プラットフォーマー「akippa」が手掛ける異業種の橋渡し

 
ヤンマースタジアム長居内のakippaの看板

 市街地を移動していて、コンビニよりも頻繁に見かけるのがコイン式や月極の駐車場だ。コンビニと駐車場…どちらも現代人の暮らしに不可欠で、一定の区域ごとに存在することが求められる社会インフラでありながら、そのありようは正反対と呼べるほどに異なる。

 飲食物の購入のみならず、コピーや印刷、公共料金の支払い、チケット発券までもいまや可能で、街ゆく人々がおのずと立ち寄る場所になったコンビニエンスストア。いっぽうそれとは対照的に、クルマを駐める以外の用途がなく、支払いにも通常は人手が介在することのない駐車場。

 オーナーからすれば、いったん造ってしまえばあとは手間がかからないのが駐車場ビジネスの旨みでもあるのだが、いつも空いている区画が気になりはじめて、ならばどうやってそこにクルマを駐めてもらうのかという話になると、管理会社任せなところが裏目に出て、ほとんど打つ手がないのが従来の流れだった。

▽オーナーとドライバーの双方のニーズ満たす

 そんな駐車場ビジネスのあり方を変えつつあるのが、すでに拠点数1万を超えて全国区の存在になった「akippa(あきっぱ)」だ。駐車場の有休スペースを自社プラットフォームに登録してもらうことでクルマを駐めたい人がアプリから探せるようにし、駐車場オーナーとドライバー双方のニーズを満たすことを狙いに2014年4月にサービスを開始した企業である。

 人気アーティストのコンサート当日で、すぐに満車になりそうなスタジアム近隣の駐車場を事前に予約して確保しておけたり、スマートフォン決済の現金いらずで、駐車場オーナーも追加投資ゼロで始められたり、当初は未対応だった15分単位の時間貸しも16年3月から利用可能とすることで、格安な料金を売りに一般のコインパーキングと張り合えるようにもなっていたりと、akippaのビジネスモデルや着眼の非凡さについては、すでに各種媒体で紹介されているので、サービス全般の紹介はそれらの既出記事に委ねたい。

 この記事で的を絞って紹介したいのは、さまざまな異業種とコラボをすることで駐車場の利便性を高め、さらなる利用客を呼び込もうとするやり方だ。これは、前述のコンビニの集客手法にも通じ、人々の暮らしをもっと便利にするという観点からも歓迎すべき動きだ。

 そしてもう一点、駐車場の存在をいかに潜在利用者にアピールするかについても、akippaのやり方にはさまざまな工夫がある。当記事ではそれら二点に絞り込んで紹介していきたい。

▽鉄道事業者とのコラボで駐車場プラスαの需要創出

 akippaの他業種とのコラボでまず特筆すべきは、讃岐うどん店「丸亀製麺」との協業だ。駅から遠いロードサイド店で駐車場がオーバーフローし、店内には空席があるのにクルマが駐められないせいで満席にならない事態が発生していた。そこでakippaが土日祝限定で近隣の駐車場を確保し、この問題を解消したのだ。

 「akippaは自分たちを駐車場事業者ではなく、中立的な存在のプラットフォーマーだと考えています。ですから、駐車場業界の各社も敵とは見なさず、上位10社中5社とすでに提携していますし、他にもさまざまな事業者と手を組んで駐車場問題を解消し、ユーザーの利便性向上に力を尽くしていきたいと考えております」(akippaの金谷元気社長)

 金谷社長のこの発言が、akippaの立ち位置を雄弁に物語る。同社が介在することで駐車場と他の事業者がつながり、プラスαの利用価値が生み出されるのだ。そしてここ数ヵ月中にも中古車販売の「ガリバー」、地図検索サイト「Mapion」など各社サービスとの協業開始が報じられているが、当記事では鉄道事業者やシェアサイクルとのコラボにとくに着目し、それが生み出したパーク&ライドの需要創出について紹介したい。

 さて、akippaは16年7月の京浜急行電鉄との協業を皮切りに、同年8月には京阪電鉄鉄道と、同年12月にはJR九州グループと、また17年9月には熊本電気鉄道とそれぞれコラボを開始して、鉄道駅近くの駐車場をakippaを通じて利用可能とすることで、パーク&ライドの促進に努めている。

 その中でも規模の面からも目を引くのがJR九州との協業だ。九州新幹線の久留米・熊本・鹿児島中央など6駅、在来線の大分・佐賀の2駅が対象だが、うちいくつかの駅にはポスターやデジタルサイネージが駅構内に設置され、それによる告知効果で駐車場の稼働率も高くなるという好循環が成立している。

 また上記とは別に、東京都八王子市の京王電鉄めじろ台駅近くにakippa駐車場があるのだが、ここも注目に値する。「京王線は運賃が安いため、沿線住民ではない方がここまでクルマで来て新宿方面に出るというユーザーレビューもありました」と金谷社長は言う。akippaでクルマを安く駐められて、電車賃も安いというダブルのメリットがあるわけだ。

 akippaはスマホで駐車場探しから予約、決済までが完結することから、ITリテラシーの高い人に親和性の高いサービスだ。そのようにIT慣れした人はフットワークも軽いから、一見面倒なパーク&ライドもさほど抵抗なく使ってくれる。IT時代にふさわしい需要創出のあり方として、参考になる事例だ。

▽シェアサイクルとの協業開始も、普及後押し

 なお、シェアサイクルとのコラボも特筆に値する。京都市左京区の平安神宮に隣接する岡崎公園の公営駐車場では、akippa経由でクルマを駐めるとレンタサイクル1台の料金が無料になるというサービスがこの夏から行われているのだが、歩いて30分の距離でも自転車なら5~6分で行けることから、パーク&サイクルの便利な拠点として認知され、自転車がない駐車場と比べて稼働率が1.2倍ほどになっているという。

 くわえて、シェアサイクルの大手事業者と近々、大都市を中心に協業を開始する予定もあるのだという。シェアサイクルでは自転車の貸し借りができるポート(駐輪場)の数をいかに増やすかが課題になるわけだが、ここで記事の冒頭で触れた、コンビニよりも市街地に数が多い駐車場の存在がぐっと引き立ってくる。

 駐車場の立地条件にもよるが、たとえば3台分の区画のうち2台分が埋まるのがぜいぜいなら、残り1台分のスペースをシェアサイクルのポートにする手がある。どちらもスマホ決済なので無人サービスにできるし、駐車場オーナーの収入アップにもつながり、シェアサイクル事業者はポート網をきめ細かくできる。

 これは、日本でなかなか進まないシェアサイクルの普及を後押しする効果からも興味深い試みである。akippaが参画することで、IT慣れをした目ざとい人たちがまず使ってくれることも期待できるから、サービス開始が待たれるところだ。

▽コインパーキングと違い電飾看板のない駐車場をいかに選んでもらうか

 ただ、駐車場の利用者はITリテラシーの高い人ばかりではない。事前の計画なしにふと街でクルマを駐めようとなった際に、どうしても目につくのは、電飾看板のついた一般のコインパーキングだ。akippaも駐車場にのぼりを立てて目印にしているというが、夜ともなれば、遠くからでも目立つ電飾看板が有利になるのは言うまでもない。

 この問題への打つ手として、まず興味深いのが「akippa自販機」だ。これは1年半ほど前から始めたもので、駐車場付近に設置することで目印と広告塔を兼ねてもらうもの。

 「月極駐車場の契約者はご近所さんが多いので自販機を使う動機には乏しいのですが、akippaのユーザーさんは一時利用客なので、クルマを駐めたついでに買おうかとなりやすい。そこに着目し、オーナーさんの収入を増やす観点からも設置することにしました」(金谷社長)

 このakippa自販機以外にも、サッカーJリーグのセレッソ大阪のホームであるヤンマースタジアム長居のテレビ中継で映り込む場所に大きな看板を設置するなど、akippaをまず知ってもらうための広告宣伝をあれこれ行っている。

 さらにもうひとつ、akippaならではと思われるのが、駐車場オーナーが積極的に動いて利用客を呼び込もうとする動きだ。

 たとえば大阪府堺市にある専門学校の近くに月極駐車場を所有する女性は、年末年始には学校がないため、契約者の多くを占める学生が駐める区画がガラガラになる一方で、帰省でやってきたクルマが駐める場所に困るという需給ギャップに目を留めた。そこで周囲の民家にチラシ配りをし、年末年始の一時利用という需要を掘り起こしたのだ。

 「コインパーキングは報酬も固定制で、オーナーさんに創意工夫の動機づけが働きにくい事情があります。その点akippaはレベニューシェアを第一に考え、オーナーさんをパートナーと捉えて交流会も積極的に開いています」(金谷社長)

 いったん造ればあとは管理会社任せという従来の駐車場経営スタイルに、こうした面からも変化がもたらされている。ゲームチェンジャーとしてのakippaの取り組みに、ますます目が離せなくなりそうだ。(待兼音二郎/5時から作家塾(R))

 《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。