強まる商工中金の完全民営化論 慎重論の政府と温度差 次回20日会合は非公開で議論

 

 不正融資が発覚した商工中金について、完全民営化を求める声が強まっている。今後の在り方を検討する政府の有識者検討会では民間金融機関として再出発させる方向で話が進んでおり、「政府系」にとどめたい経済産業省は水面下で軌道修正を画策。これまで公開で議論してきた検討会の20日の会合は急(きゅう)遽(きょ)、非公開となるなど見通しは不透明感が増している。

 「完全民営化について、委員に大きな認識の差はない」。検討会座長の川村雄介・大和総研副理事長は、これまでの議論をこう総括する。有識者の議論が民営化に収(しゅう)斂(れん)されていったのは自然な流れだった。

 会合ではまず、不正の温床となった公的制度融資「危機対応融資」について、規模を縮小する方向で大筋合意。そして、商工中金の新たな収益源を検討する中で出てきたのは、中小企業の事業再生や事業承継といった分野だった。

 ただ、この分野には日銀の金融緩和で収益悪化にあえぐ地域金融機関が進出しようとしており、金融庁も推奨している。政府系の商工中金が参入すれば再び民業を圧迫しかねず、委員からは「民間が進出してきたら撤退するのが筋」「民営化した方が民業圧迫を心配せずやれる」と民営化を求める声が強まっていった。

 しかし、経産省には完全民営化に慎重な声が根強い。平成20年のリーマン・ショックのような混乱が起きた場合、「民間金融機関では貸し渋りが起きる」(幹部)との思いがあるからだ。問題のほとぼりが冷めた後の天下り先として、商工中金を政府系に残しておきたいとの思惑も透けてみえる。

 仮に早期の完全民営化が決まった場合でも、政府が保有する約46%の株式を売却できるかが課題となる。設置法で政府以外は中小企業などの協同組合とその傘下の組合員しか株主になれない規定があり「そう簡単に買い手が探せない」(金融関係者)からだ。

 有識者検討会は当初、年内にも結論を示す予定だったが、辞意を表明した安達健祐社長の後任人事を含め懸案が山積し、経産省では「慌ててまとめるより年を越したほうがいい」(幹部)と拙速な意見集約を避ける動きが強まる。

 世耕弘成経産相は「(有識者会議の)結果は真(しん)摯(し)に受け止め、しっかり改革に反映する」と断言するが、踏み切れるかは不透明だ。

(蕎麦谷里志、田辺裕晶)