【和歌山発 輝く】サンコー 消費者からのはがき、家庭用品開発のヒント

 
「びっくりフレッシュ」「おくだけ吸着」「思いやりいちばん」を紹介している本社ビル内のショールーム=和歌山県海南市

 かつて、弘法大師空海が唐から棕櫚(しゅろ)の種子を持ち帰り、高野山に続く野上谷に棕櫚を植えた-。そんな言い伝えが残る和歌山県海南市は、棕櫚が原料の一つであるタワシに限らず、スポンジやブラシ、便座カバーなど国産の日用家庭用品の8割を製造する一大産地だ。

 大阪府と和歌山県を結ぶ阪和自動車道の同市の玄関口、海南東インターチェンジそばにあるビルが、創業55周年を迎える家庭用品メーカー「サンコー」の本社。洗剤なしで汚れを落とせる「びっくりフレッシュ」を使った掃除用スポンジや、洗濯機で洗っても吸着力が持続し、取り付けが簡単な「おくだけ吸着」を使った台所マット、便座カバーといった登録商標を持つユニークな技術を駆使し、消費者の“かゆいところに手が届く”家庭用品を送り出してきた。

 ◆全部門で共有

 使いやすさへの喜びの声、商品の形状や大きさへの意見、欲しい商品の要望…。「ボイスカード」と呼ばれるアンケートはがきに消費者からの思いがつづられている。

 毎日約10通送られてくるはがきは、角谷太基社長や幹部社員が目を通し、全部門が共有。商品の開発会議でもはがきの山が積まれている。「(はがきを書く人は)購入者の約3%だが、しっかりと書いてくれるお客さまばかり」と角谷社長は笑顔で話す。「新商品開発のヒントから得意先への営業トークまで、幅広く活用している」という取り組みは、「おくだけ吸着」の開発がきっかけで始まったという。

 同社は現社長の父、勝司氏が1962年、個人商店として創業。高度経済成長期には便座カバーやトイレマットなどで業績を伸ばしたが、経済の停滞とともに業績も80年代ごろから停滞した。

 国内外の自社工場を手放し、開発に専念していた92年。当時多数あった「便座カバーの取り付け方がわからない」という問い合わせに、アクリル樹脂を発泡させて洗濯しても吸着力に影響がない「おくだけ吸着」を開発。便座に貼るだけという手軽さが受け、ロングセラー商品となり、同社に初めて消費者から感謝の手紙が届いた。

 「生活者が困っていること、不便さを解消することで、ニーズが分かってくる」。はがきを商品に添付するようになり、20年以上。商品開発にも大きな影響を与えている。

 ◆顧客の喜びが利益に

 「ユニホームの汚れを取るのにすごくいい。ユニホーム用のものも作ってくれませんか」。札幌市の女性は、少年野球をする子供のユニホームの汚れが同社のキッチンクリーナーを使うと取れたことと、ユニホームに特化した商品の要望を手紙につづった。すぐさま同社では、ユニホーム用に汚れを取る洗濯関連用品を開発した。

 ほかにもさまざまな場面で、はがきをきっかけに多数のアイデアが生まれてきた。角谷社長は「潜在的なニーズをつかむことはリピーター獲得にもつながる」と語る。

 2015年に立ち上げたバリアフリーブランドの商品として、高齢者などがソファやベッドから楽に立ち上がれるマット、携帯用トイレなどの商品開発も進め、時代のニーズへの対応も欠かさない。

 「人の心に貯金せよ」。本社ビルの玄関に立つモニュメントに刻まれた勝司氏の言葉だ。角谷社長も消費者重視の姿勢を忘れない。

 「世の中は変わっても、人の心も変わらない。お客さまに喜んでいただいた付加価値が“利益”となる」(尾崎豪一)

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【会社概要】サンコー

 ▽本社=和歌山県海南市大野中715 ((電)073・482・5011)

 ▽創業=1962年3月

 ▽資本金=9500万円

 ▽売上高=25億2000万円(2017年3月期)

 ▽従業員=100人

 ▽事業内容=生活用品の企画製造販売

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 □角谷太基社長

 ■「大きくて強くて良い会社」に

 --ボイスカードの内容も現在の形になるまで試行錯誤を重ねたそうだが

 「最初は選択肢型で『その方が返答してくれるお客さまも多いだろう』と思い、はがきを作って、集計したが、家族構成やどこに住んでいるのかといった『顧客属性』は見えても何もニーズは見えない。先代から『それではあかん』と言われて(確認が)面倒だが、自由に書いてもらう現在の形にした。先代は家に帰っても、はがきを酒のさかなにして、ものづくりに生かしていた」

 --家でも仕事と向き合う先代社長。どんな人だったのか

 「15歳から商いを始めて、社長を退任した(当時74歳)後も『開発だけはやらせてくれ』と毎日のように出勤するような人だった。(昨年4月に)亡くなってからは、時間の経過とともに『みんなでやらなあかん』という思いが社内に生まれつつある」

 --仕事への情熱が人一倍な先代に続いて社長就任。苦労したことは

 「もともと、先代は脳梗塞発症を機に(社長を)譲ろうとしていたが、当時私が責任の大きさに鬱のような状態になり、延期になった。5年後、先代は『(社長の)権限はとりにくるもんや。(自分が)言ってることの10割を理解して、6割を習得できたら譲る』と言いながら、就任させてくれた」

 --今後の目標は

 「『大きくて強くて良い会社』にしたい。先代は『小さくて強い会社』を目指したが、今のままで大きくなっては“膨張”になるので、さまざまな面で無駄をなくしていく」

 --大きくて強くて良い会社に向けては

 「素材にこだわり、お客さまの声を形にし、ファンを獲得する。一方で、商品価値を高めてしっかりと収益を出し、全従業員を物心両面から豊かにする会社にしていきたい」

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【プロフィル】角谷太基

 かくたに・ふとき 大阪府立大経済卒。米国留学や大阪市内の商社勤務を経て、1991年サンコーへ入社。2009年から社長。52歳。和歌山県出身。

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 ≪イチ押し!≫

 ■洗剤不要の湯垢落とし「バスピカピカ」

 一度使うと忘れないシンプルでわかりやすい商品名が印象的だ。何本もの形の異なる断面を持つポリエステル繊維で汚れをかきとり、洗剤いらずで湯垢を落とすことが可能。1998年の発売以来、ロングセラーの売れ筋商品だ。折り曲げて、風呂の縁もスムーズに洗うことができる。

 消費者からの意見を反映し、風呂場のフックなどにかけやすいように吊りひもをつけるなど、発売以来数回にわたり改良。女性の手にもフィットしやすいコンパクトな大きさに設計されているという。年末の大掃除シーズンを控えて、サンコーでは「お風呂掃除にぜひ手に取り、使っていただきたい」とアピールしている。

 色はピンク、青、緑の3色。380円。問い合わせは同社消費者サービス課(フリーダイヤル0120・87・1149)まで。