【木下隆之のクルマ三昧】日本市場に活力与えるボルボ初の大賞 花を添えたレクサスLC

 
日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したボルボ「XC60」

 12月11日、今年の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」が決定した。東京・台場の国際交流会議場で開票が行われ、今年を彩る大賞と数々の特別賞が発表されたのだ。

 選考結果は以下の通り。

■大賞「ボルボXC60」

■イノベーション部門賞「トヨタプリウスPHV」

■エモーショナル部門賞「レクサスLC」

■スモールモビリティ部門賞「ホンダN-BOX/N-BOXカスタム」

■実行委員会特別賞は「ハイブリッド車で世界累計販売が1000万台突破」と「佐藤琢磨のインディ500優勝」

38回目で初の大賞

 これまでの38回の歴史の中でボルボが大賞に輝いたのは初めてだという。これまで何度も高得点を獲得してきたものの、惜しくも数点差で涙を飲んできた。悲願達成は、関係者にとってはこの上ない喜びだろう。

 ただ、今年の決定で会場が騒然となったのは、これまであまり前例のなかった輸入車が、日本車を抑えて大賞に輝いたことだ。輸入車が大賞を獲得するという快挙は、過去にVWゴルフによって達成された一度しかなかった。選考委員すべての得点が開票された直後の、拍手が割れんばかりに会場を包む前のどよめきはそれが理由だ。

 日本カー・オブ・ザ・イヤーはそのタイトルが表すように日本の賞である。日本の道路事情や日本人の使い勝手、あるいは日本の交通社会に合致しているかも厳しく審査される。ゆえに日本車が有利なのも道理。

 だが、日本車もグローバル化になり、日本だけのモデルではなくなった。逆に世界もグローバル化によって自国専用車ではなくなった。日本カー・オブ・ザ・イヤーの大賞をボルボXC60が獲得したことは、自動車のグローバル化を象徴する出来事だと思える。

大賞の意義とは

 僕はレクサスLCに最高得点を与えた。レクサスLCは、その美しく煌びやかなデザインが印象に強く残るし、GA-Lと呼ばれる新しいプラットフォームがもたらす走りは他を圧倒する。ハイブリッドシステムはさらに高度に進化した。

 だが僕がレクサスLCに最高得点を与えた理由はそれだけではない。日本カー・オブ・ザ・イヤーとは、その年を代表するもっとも華やかなモデルであると思っているからである。賞というからには、時代を彩る華やかさが必要不可欠だからだ。

 例えばこう考えてもらおう。日本レコード大賞はその時代を象徴する曲と歌手に与えられる。音程や声量がすべてではない。歌唱力が最優先されるのならば、可愛いだけのアイドルやパフォーマーは大賞を獲れないことになる。どんなにヒットしても、どんなに巷で話題になっても、だ。だが、レコード大賞はそれとは違う。その年を彩ること。これが優先される。それと同様に僕は、日本カー・オブ・ザ・イヤーの大賞の意義を考えているのである。

 それでいてもちろん、レクサスLCはクルマとしての完成度が高い。満点の資格がある。選考委員の配点を詳細に分析すると、レクサスLCに満点を与えた人が多かった。かたやボルボXC60は、満点の数でポイントを稼ぐのではなく、低い点数を満遍なく集めた。取りこぼしがなかったのだ。クルマのキャラクターを正しく表していると思う。

 逆にエモーショナル部門賞で多くの得点が集まり、特別賞に輝いたのは当然であり、嬉しく思った。数年後に2017年の今を振り返った時に、レクサスLCの生まれた年なのだと記憶に刻まれるはずだからなのだ。

 ともあれ、初の大賞に輝いたボルボXC60を始め、数々の部門賞を獲得した魅力的なクルマたちには賛辞を送りたい。そして一方で、選考委員の立場から不遜な発言を許してもらえれば、ボルボXC60に大賞が与えられたのは、沈静化する日本市場に活力を与えて欲しいとの願いが含まれていると思う。

 日本カー・オブ・ザ・イヤーとはそういうものだ。そのクルマの良し悪しに加えて、期待が数字となって配点されたのだと思う。

■選考委員別配点表はコチラから

木下隆之のクルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は隔週金曜日。

【プロフィル】木下隆之(きのした・たかゆき)

レーシングドライバー 自動車評論家
ブランドアドバイザー ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。