新幹線台車亀裂、過去にも重大事案 危うい「思い込み」の安全神話

 
新幹線のぞみの台車に見つかった亀裂(JR西日本提供)

 博多発東京行きのぞみ34号(N700系)の台車に亀裂や油漏れが見つかったトラブルは、新幹線で初の「重大インシデント」に認定され、運輸安全委員会やJR西日本が調査を進めている。だが、専門家は運輸安全委が設置された2008年の前にも、大事故につながりかねないトラブルがあったと指摘。「JR西の中に、新幹線は安全だという思い込みがあるのでは」と批判する。

 新幹線は1964年の開業以来、脱線や故障による「乗客の死亡事故ゼロ」を誇る。“安全神話”が語られるゆえんだ。国土交通省の統計では、2016年度にJR在来線で運転事故は337件あったが、新幹線は3件。運休や遅れなどの輸送障害は、在来線3818件に対し89件と圧倒的に少ない。

 新幹線の技術に詳しい工学院大の曽根悟特任教授は、今回、異変を察知しながらJR西が「運行に支障はない」と判断した背景に「新幹線と在来線を別物と捉える認識」を挙げる。「新幹線なら大丈夫だろうという思いがあったのではないか」

 台車やその周辺のトラブルはこれまでも起きている。66年にひかり42号の車軸が折損。91年には東京を出発したひかり291号の車輪の一部が回転しない状態で三島(静岡県三島市)まで走行し脱線一歩手前に。翌年、ひかり238号の駆動装置部品が落下した。

 08年に設置された運輸安全委は、発生した事故だけでなく重大インシデントも調査対象とした。曽根教授は、それ以前に起きたこれらのトラブルは「今の定義であれば重大インシデントに該当する」とみる。いずれも死傷者は出なかったが「過去の重い教訓が生かされていない」と批判した。

 亀裂が見つかったのぞみは、3年または走行120万キロの周期で行う「全般検査」を2月21日に、45日または走行6万キロの「交番検査」を11月30日に実施。走行当日の12月11日の未明にも目視点検したが、JR西関係者は「目視で全てを確認するのは無理がある」と打ち明ける。関西大の安部誠治教授(交通政策論)は「決められた検査の周期が適切かどうかも今後の課題だ」と語る。