【リーダーの素顔】アサヒカルピスウェルネス社長・千林紀子さん

 

 ■女性初の枕詞に気負いなく 食の未来に貢献

 アサヒグループホールディングスの主要グループ会社で、女性で初の社長に就任した。女性総合職2期生で、昇進のたびに“女性初”の枕詞(まくらことば)がついてきた。しかし、本人は「アサヒは昔から女性が活躍する舞台が整っていたため違和感はないです」と気負いはない。健康食品の通信販売などを手掛けるアサヒカルピスウェルネスのトップとして「付加価値の高い商品を提供する」ことで、さらなる成長を目指す。

 --女性総合職2期生。入社当時は苦労が多かった

 「同期の女性総合職は全員、最初は営業職に就きました。当時、私が担当した地域は大阪府箕面市や同豊中市などです。居酒屋や飲食店、卸会社などを回るのですが、最初の頃は店主から『女性で大丈夫なのか?』と不安がられることも多かったです。中には渡した名刺をすぐに破り捨てる人もいて大変でした」

 --どう克服したのか

 「とにかく通い詰めて、一つ一つ信頼を築いていくことです。1年くらいたつと、まるで自転車に乗れたときのように仕事に慣れました。むしろ、女性だからこそプラスに働いた面も多くなりましたね。例えば夜に営業している飲食店にも営業で回るのですが、当時は、そうした店に女性が来るのは珍しくて新鮮だったらしく、お客さまの印象に強く残りました」

 --営業職の後は、商品開発担当になりました

 「営業は3年半ほどでしたが、仕事が楽しくなっていたので、予期せぬ異動でした。商品開発では、1995年に発売した『アサヒ黒生』を手掛けました。当時、家庭で濃色ビールはほとんど飲まれていません。そこで普通のビールを飲んだ後に飲むビールという意味で『アフター9のビールです』というキャッチコピーで売り出しました。最初は社内でも期待されていなかったようですが、テスト販売したコンビニエンスストアで初日から結構売れたため、本格販売するに至りました」

 --その後、出向先のアサヒ飲料で女性初の商品戦略部長になるなど、女性社員のパイオニアとなった

 「私の世代の頃からアサヒは女性総合職を多く採用していることもあり、社内であまり『女性初』とはいわれません。女性であることにプレッシャーを感じたこともないですね」

 --健康食品の通販などを手掛けるアサヒカルピスウェルネスの設立に深く関わりました

 「2013年にホールディングスでM&A(企業の合併・買収)を担当する部署に異動になり、そこで『成長している通販で何かできないか』と考えました。ちょうど健康食品の通販を手掛けるカルピスがグループ入りしたタイミングとも重なり、15年に新会社を設立した上で通販を本格的に展開することになりました」

 --今年3月には社長に就任した

 「発酵というグループの核となる技術を使って、健康食品や飼料事業などのビジネスを進めています。テーマは『食の未来に貢献し経済的な価値を生む』です。健康食品の通販事業では、丁寧にお客さまに説明できるようコールセンターの人を増やしてきました。また、飼料事業では、乳酸菌などの力で動物の腸内環境を整え、健康に家畜を育てられる商品を扱っています。与える飼料を減らし効率良く家畜を育てられるため食糧難の解消にもつながると考えます。今後もコア技術を武器に、人と動物の健康に貢献していきます」(大柳聡庸)

                  ◇

【プロフィル】千林紀子

 ちばやし・のりこ 1967年7月生まれ。早大卒。旧アサヒビール(現アサヒグループホールディングス)入社。カルピスで機能性食品・飼料事業に携わり、2016年にアサヒカルピスウェルネス取締役。17年3月から現職。50歳。神奈川県出身。

                  ◇

 ≪DATA≫

 【入社動機】もともと消費財を中心としたメーカー希望。学生時代にアサヒのビール「スーパードライ」を飲み、「味だけでなく、マーケティングや広告も斬新で衝撃を受けた」ことから入社を決意した。実家が飲食業を営んでいたことも「(酒類メーカーに)興味を持ったきっかけかもしれませんね」。

 【仏像】子供の頃から油絵を楽しんでいた。学生時代には「阿修羅像を油絵で描くことにはまっていた時期がありました」という。社会人になってからは油絵を描く時間はないものの、「今でも仏像を見ることが好き」。都内で仏像展が開かれれば足しげく通う。また、京都や奈良に旅行に出かける機会には、お寺を巡って心を落ち着かせる。

 【趣味】「趣味を問われると必ず、『飲むこと』と答えています」と笑う。飲む場所はもっぱら新入社員時代に知った立ち飲み屋だ。会社や自宅周辺の店に社員や友人らと繰り出す。「知らないお客さんとも友達になれる」ところが魅力だとか。