教習所、ドローンで生き残り 車離れ・少子化で苦境 高い安全意識に強み

 
ドローン教習所の開校式で垂れ幕を下げて飛行するドローン=2016年7月、兵庫県南あわじ市

 若者の車離れなどを背景に生徒数の減少に悩む自動車教習所の生き残り策として、「ドローン(小型無人機)教習」への参入の動きが本格化してきた。陸上走行と空中飛行の違いはあれど、積み上げた「操縦を教える」ノウハウが生かせるほか、教習用の広い敷地も活用できるとあって、12月には業界グループも立ち上がるなど、新たな動きが広まっている。

 業界団体を設立

 「初期投資はどれだけかかるのか」「公安委員会からクギを刺されないか」。今年10月中旬、東京都内の会議スペースを埋め尽くす参加者からは次々と質問が飛んだ。いずれも全国から集まった指定自動車教習所二十数社の関係者だ。

 会議はドローン教習のできる自動車教習所の業界団体「全国自動車学校ドローンコンソーシアム(ジドコン)」を立ち上げようと、自動車教習所を対象に開いた説明会だ。加盟した教習所は指導員育成などドローン教習事業立ち上げのサポートが受けられるほか、受講した生徒は、国土交通省がドローン教習管理団体と認定した一般財団法人「日本UAS産業振興協議会」(JUIDA)発行のライセンスを受け取れる。

 設立準備総会にあたる17日の全体会議には、16校の指定自動車教習所が参加。事務局機能を受け持つ事業コンサル「スペースワン」(事業所・東京都台東区)の小林康宏社長は「当初の予想よりも多くの教習所が参加してくれた」と手応えを口にする。

 少子化に加え、車を所有する若者が減ったことで、自動車教習所の経営環境は厳しさを増している。

 警察庁などによると、全国の指定自動車教習所の年間卒業者数は、1988年の約264万人をピークに昨年は約156万人に減少。教習所の経営が圧迫された結果、教習所数も右肩下がりに減り続け、2001年には1500校を割り込み、昨年時点で1332校となっていた。

 こうした中、教習所の経営者が活路を見いだすのがドローン教習への参入だ。

 ドローンは災害対策や映像撮影、建設分野などでの活用が進む。民間調査会社によると、日本国内の市場規模は16年の199億円から20年には1138億円、世界市場も2700億円から7300億円まで膨らむ見通しという。

 一方、ドローンをめぐっては操縦者の目の届かない長距離飛行の規制について議論が政府内で始まったばかりなど、急激な普及に法制度が追いついていない。11月に岐阜県内のイベントで菓子をまいていたドローンが落下し複数のけが人が出た事故では、飛行許可を得ていない機体を飛ばしていた。モラルや安全への意識醸成も課題だ。

 安全対策のカギになるとみられる操縦技術の資格制度などについては、政府の官民協議会のロードマップでは20年以降の整備スケジュールとなる。公的な操縦者養成システムがない中、民間のドローンスクールは乱立気味で、淘汰(とうた)の動きも始まっている。

 かたや自動車教習所はこれまで道路交通の分野で長年、安全意識やモラルを地元の生徒に植え付けてきた実績があるほか、ドローン教習に必要となるスペースも所有しており、教習ビジネスとしては先駆的存在。ドローン教習でも高い品質で競争優位に立てる余地が大きいという。

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 人材の有効活用

 自動車教習所の指導員が、ドローン教習の講師免許を取れば、余剰人員を有効活用できるメリットもある。既にドローン教習にかじを切り、実績を挙げる教習所も出てきた。

 岩手県奥州市の江刺自動車学校は今年5月、「岩手ドローンスクール」を開校し、これまで78人の生徒が卒業した。同校は1970年代前半まで年間約1000人の自動車教習の生徒を抱えたが、最近は400人程度まで落ち込んだのをきっかけに、ドローン教習を手がけるようになった。

 教習は4日間で初日に関係法令などのルールを学んだ上で、2、3日目には操縦の実技。最終日の試験に合格して講習を受ければ、操縦技能と安全運航管理のライセンスを取得できる。実技は自動車教習と別の日に実施し、自動車教習との両立を図る。朽木聖好代表は「地元で自動車教習を長年担ってきた信頼もあって事業は順調」と話す。

 小林氏は「人材育成のプロを抱える自動車教習所こそ、ドローン教育の担い手となるべきプレーヤー。ドローンライセンスの需要は今後も高まることが予想されるので、『ライセンスといえば教習所』の強みが発揮されるのではないか」と期待を寄せる。(佐久間修志)