不動産業界など「快適オフィス」で士気向上 “ワイガヤ感”が増す仕掛けとは

 
三菱地所の新本社のイメージ。内部階段を設けて部署の垣根を越えたコミュニケーションの活性化を図る

 働き方改革の一環として、不動産やオフィス家具メーカーの間で社員が一体感を持って業務に取り組めるよう本社拠点を整備する動きが広まっている。個室の廃止や大型円卓の設置など工夫を凝らしたレイアウトで対話を促し士気を高めるのが狙いだ。外部の意見も積極的に取り入れ、改良を重ねた「快適なオフィス空間」を、職場環境の改善に取り組む企業への提案営業にも生かす。

 担当役員の個室廃止

 不動産大手の三菱地所は年明けに移転するオフィスビル「大手町パークビルディング」(東京都千代田区)の3~6階を新本社として活用する。各フロアを2つの内部階段でつなぐことで、部署の垣根を越えたコミュニケーションの活性化を図る。

 同社は現本社の大手町ビル(同)で「FINOLAB(フィノラボ)」という、金融とITを融合させたサービスを開発するフィンテック企業の育成拠点を運営する。みずほフィナンシャルグループの拠点も誘致し大手金融機関との連携を促すことで、ベンチャー企業の成長を後押ししている。

 一方で、「コラボレーションの重要性を唱えながら、果たして社内でこうした文化が形成されているのか」といった社員の声が少なくなかった。このため新本社では、人が自然に集まるような環境づくりに力を入れることにした。

 移転に伴い本社スペースは、現在の延べ床面積に比べ25%減少する。1人でこもるような執務空間を削減したのが理由だ。その分、社員が気軽に集うことができる共用スペースを大幅に拡充。全体に占める割合を10%から30%へと増やした。

 併せて、大胆な改革も断行する。事業部門を管轄する担当役員の個室を全て廃止し、一般社員と同じ空間に座るようにする。部長席もなくしてフリーアドレス型の机で仕事を進める。

 総務部の竹本晋ユニットリーダーは「個室をノックして『ご相談が』などといった慣習が心理的な壁になっていた。それが取り払われることで、物事のスピードが速まっていくはず」と社内の動きが活性化することに期待を寄せる。自社オフィスは積極的に公開していく。外部意見は随時反映させ改良を重ね、より高度な空間づくりを目指す。

 “ワイガヤ感”で工夫

 不動産中堅の新日鉄興和不動産(東京都港区)も来年3月、本社を「赤坂インターシティAIR(エア)」(同)に移転する。オフィス全体を1本のループで結んだような仕掛けを行うことにより、一体感を持たせる。同社は9フロアに分断されているオフィスを2フロアに集約。各部署が機動的に連携し、優れた付加価値を生み出すのが狙いだ。

 そのために、さまざまな座席を設置する。執務用の約500席に加え、多様な業務に対応できるよう約500席を用意。フロアの両端には集中ブースタイプを配置し、中央に近づくに連れて「ファミレスタイプ」や「テーブルタイプ」を用意するなど“ワイガヤ感”が増すような仕掛けを行っていく。

 各本部の中心部には「Big Table」を設置する。アメリカンフットボールのフィールド内で行われる作戦会議「ハドル」の機能を持たせ、必要なときに集まり、意思決定後は即座に解散し、それぞれの仕事に戻れるミーティングを提唱する。

 一方、大手オフィス家具メーカーの岡村製作所は東京に分散している拠点を今春にも赤坂インターシティAIRに一部集約する。実験的な空間としての役割を果たす「オフィスラボ」を新設し、働き方改革につながる先進的な機器群をアピールする。中村雅行社長は「優秀な人材の確保と生産性向上、テレワークに代表される柔軟な働き方が大きな経営課題となっている。こういった動きが地方や中小企業にも波及しており、需要に変えていくことがわれわれの目標」と話す。

 大手町や虎ノ門、渋谷といった東京都心部の主要エリアでは再開発事業が急ピッチで進められており、テナント誘致をめぐるエリア間競争は激しさを増す。各デベロッパーが勝ち抜くには、働き方改革につながるオフィス空間の提案を行えるかが鍵となる。

 岡村製作所以外に内田洋行、イトーキといった大手オフィス家具メーカーも、不動産業界と同じ動きを示す。本社やショールームなどの整備に力を入れ、働きやすいオフィス環境の提案に注力する。働き方改革につながる拠点整備の動きは今後、さらに加速するとみられる。(伊藤俊祐)

 ■新本社の特徴

 ◆三菱地所 ・コンセプトは「オフィスをパークに」

       ・共用スペースの比率を10%から30%に拡大

       ・2カ所に内部階段

       ・事業部門を管轄する担当役員の個室を全て廃止

 ◆新日鉄興和不動産 ・コンセプトは「move(動く)」

           ・約500席の自席と約500席の多様なワークスペースを用意

           ・朝から夜までフル活用できる多目的空間を用意