【スポーツbiz】キタサンブラック快挙も…売上げはピーク時の半分、JRAの地道な努力

 
有馬記念を快勝したキタサンブラック=24日、中山競馬場

 2017年の世相を表した漢字は『北』。競馬のキタサンブラックがラストランとなった年末の大舞台、有馬記念を制し、まさに今年の象徴となった。

 表彰式、「祭りだ、祭りだ」とオーナーである歌手、北島三郎さんが歌う。中山競馬場に詰めかけた10万人を超える入場者の大半がその歌声に呼応した。ファンならずとも競馬の魅力を感じとったことだろう。

 記憶・記録に残る名馬

 いうまでもなく、有馬記念は競馬振興に貢献した故・有馬頼寧第2代日本中央競馬会(JRA)理事長をたたえて命名された重賞レース。国際競馬統括機関連盟(IFHA)が発表した16年「世界のトップ100GIレース」の格付けランキングで世界13位、日本1位に位置づけられたレースである。

 毎回、ファンの人気投票をもとに、その年を代表する馬が出走する。このレースを最後に引退するキタサンブラックには、1番人気という大きな期待とともに重圧もかかっていた。

 しかし、歴代最多勝騎手、来年にも前人未到のJRA通算4000勝に手が届くかという武豊騎手の絶妙な手綱さばきもあり、終始トップで走り抜けた。

 有馬記念3度目の挑戦での初勝利は、同時にJRA最多、史上5頭目となるGIレース7冠馬の誕生でもあった。このレースでの3億円を加えて、獲得賞金18億7684万3000円は歴代最高額である。

 引退後は種牡馬となるが、その価値は13億5000万円といわれ、サンケイスポーツによれば1回当たりの種付け料は400万円に上るという。

 新聞各紙は、「記憶とともに記録に残る名馬」と報じた。

 キタサンブラックという人気馬を中心に高い関心を集めながら、しかし、今年の有馬記念の売り上げ441億9957万5700円は前年比98.4%。ギネス記録に載るなど最高値を示した1996年、875億104万円の50.5%にすぎない。

 JRAの売り上げを比べても、ピーク時の97年には4兆6億6166万3100円に上っていたが、2016年は2兆6708億8026万1600円と66.8%となっている。

 開拓に地道な努力

 では、競馬人気は退潮しているのかというと、決してそうではない。確かにピーク時には売り上げ4兆円を突破したが、あくまでもバブル時代で単純に比較はできない。

 国税庁の「民間給与実態統計調査」によれば、給与所得者の平均年収はその頃を頂点に、1990年代後半から下がり、2009年、11年には410万円を切った。JRAの売り上げも11年に2兆2935億7805万3000円と最低値を記録した。

 12年以降はレースによって変動はあるものの、むしろ上昇カーブを描く。JRAの売り上げは給与所得者の平均年収、可処分所得のカーブに比例しているといってもいいが、人口減少時代、関係者のファン開拓の地道な努力が実を結んだといえよう。

 テレビCMの充実や競馬場の改築などで若い層、とりわけ女性層への浸透を図るとともに、初心者向けの競馬教室を通じた普及活動。さらにはインターネットを通した勝馬投票券の購入システム構築など、さまざまな手段を講じている。

 そんなJRAだが、キタサンブラックの有終の美を伝えた同じ日の産経新聞は、一方で興味深い記事を掲載した。

 家族の申告に基づいてインターネットによる投票券販売を停止する制度の導入である。ギャンブル依存症と診断されたり、その疑いがあるとされる人を対象にした措置で、統合型リゾート施設(IR)導入に備える政府方針に則している。そうした制度を、JRA自らが推進することが画期的だ。

 インターネットによる売り上げの減少は否定できない。しかし、それに増して導入の意義を積極的に考えたのであろう。若い層や女性層、初めて購入したいと考えている層に「安心、安全」を伝える意義は大きい。

 もちろん、その先には18歳での勝馬投票券購入があると思われる。現在、購入できる年齢は20歳以上に制限されているが、一足先に選挙権が20歳から18歳に引き下げられた。これに呼応して解禁となれば、潜在的なファン層の拡大も期待できる。

 キタサンブラックの子供たちが競馬場に登場するのは21年ごろ。さて、JRAの売り上げ増大、ファン拡大は実現できているだろうか。(産経新聞特別記者・佐野慎輔)