【群馬発 輝く】アスリートからメディカルまで…独自の機能性インソールで世界を変える「BMZ」

 
インソールは、職人が一枚一枚丁寧に製作する=15日、群馬県みなかみ市

 □「BMZ」(ビーエムゼット)

 冬になるとスキー客でにぎわう群馬県みなかみ町。このまちで、人間の足の裏から世界を変えようという壮大な野望に燃える会社がある。靴底に敷く機能性インソールの開発・製造を行う「BMZ」(ビーエムゼット)だ。

 プロアスリート愛用

 同社のインソールは、人間の足の骨格全体を支える立方骨をサポートし、足の運動性を維持するという独自理論を基に設計されている。疲労軽減やけが予防に効果が認められ、年間約15万足を売り上げる。サッカーやスノーボードなど幅広い種目のプロスポーツ選手に愛用されている。

 高橋毅社長(61)は県立沼田高校時代、サッカーでインターハイ出場、県代表選出の経験を持つなどスポーツへの造詣が深い。

 人間の足には、かかと、母趾球、小指球を結ぶ三角形の辺である3つのアーチがある。高橋社長は「それらのアーチが崩れると、運動のパフォーマンスが落ち、けがをしやすい状態になる」と説明する。

 従来のインソールは、アーチの部分を盛り上げ支えることで守っていたが、ギプスのように土踏まずを圧迫するため、足の動きを阻害するという弱点があった。

 そこで高橋社長が開発したのが、立方骨を支えることで骨格を崩さずにアーチを守るインソールだ。「キュボイド(立方骨)バランス理論」と呼ばれる理論を基に作られ、土踏まずを接地せずに足指を自由に動かせる。

 立方骨のほかに踵骨(しょうこつ)前部の2点を支える「CCLP理論(Cuboid Calcaneus Leverage Power)」に基づくインソールの販売も2014年に開始。より安定性が増し、過酷なスポーツの衝撃からもアーチを守れるアスリート向けのモデルだ。

 群馬出身のサッカー元日本代表、青木剛選手やソチ五輪スノーボード女子銀メダリストの竹内智香選手がCCLPインソールを愛用するほか、契約・使用選手は約150人に上る。使用感も「自然で、支えられている感じがしない」「疲れが全然違う」などと好評で、けがも減ったといい、選手寿命の延長にも貢献する可能性もある。

 サッカーへの思い入れが強い高橋社長は近年、「選手の足の健康をサポートしたい」とプロサッカー業界との連携を強化。今月には、FC東京とスポンサー契約を、東京ヴェルディともパートナー契約を締結したと発表。「足の機能を高め、サポートする」というコンセプトでサッカーに特化したインソールや、オリジナルのスパイク製作にも挑戦するという。

 認知症改善の期待も

 スポーツ分野だけでなく、機能性インソールを医療分野で活用する取り組みも進めている。

 13年3月に北海道文教大学と行った共同研究では、立ち上がるときに足裏に鋭い痛みが走る「足底筋膜炎」の患者にCCLPインソールを提供。日常生活で使用してもらったところ、翌朝の痛みが劇的に軽減したという結果が出た。

 さらに、昨年からは東北大学と脳の働きへの効果について共同研究も開始。インソールを履いて歩くことで全身の筋肉が鍛えられ、脳に刺激が加わることで認知症の改善につながる-という仮定がベースにある。

 高橋社長は「認知症は世界的な問題。改善方法として、インソールが一つの選択肢になるといい」と期待している。(住谷早紀)

【会社概要】BMZ

 ▽本社=群馬県みなかみ町上津1093-4 ((電)0278・62・0928)

 ▽設立=2004年12月

 ▽資本金=8300万円

 ▽従業員=13人

 ▽売上高=1億1500万円

 ▽事業内容=機能性インソールの研究開発、製造、販売

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 □高橋毅社長

 ■企業成長の根本は「人を育てる」

 --インソールにこだわる理由は

 「うちのインソールを使う人には、『けがをして選手寿命を縮めてほしくない』との思いで製作している。高校時代、サッカーのプロになりたくて猛練習していたが、気がつけば無理がたたって、けがが重なり、サッカーが続けられなくなった。スポーツショップに就職し、社会人サッカーを始めて『高校時代のけがは、合わない靴を履いての過酷な練習が原因だ』と気づいた」

 --創業までの経緯は

 「自分と同じ悩みを抱えている人は多いと思い、ショップのお客さんに靴選びのアドバイスをするようになった。その後、スキーブーツの調整・加工を行う店を経て、『お客さんの足にぴったりの靴』にこだわるようになり、オーダーメードのインソール製作を始めた」

 --経営に際して大切にしていることは

 「社長(自分)を中心とした『教育』だ。人間力、人間性を高めないと、いくら専門的な能力を身に付けても、発揮されない。いろんな会社で不祥事が起こるのは、人間性をおろそかにし、収益性を重視して人間教育ができていないからだ。企業の成長の根本は『人を育てる』ことだと思う。もう一つは、トップがどれだけ高い目標を持てるか。そして社員がトップと一緒に夢を見続けられるか。そのために、社内で業務の透明化を図り、決算書なども全員で見て、会社の方向性を統一している」

 --今後の目標は

 「2022年に上場し、たくさんの支援を得て、世界へ出たい。期待されている医療分野では、内臓の病気を治療したり、脳の働きを改善したりするインソールを作りたい。もっと発展して、履くだけでポジティブになったり、胃腸の調子を良くしたりできるインソールの開発も可能だと思う」

【プロフィル】高橋毅

 たかはし・つよし 群馬県立沼田高卒。地元のスポーツショップで運動靴やスパイクの販売に20年以上携わり、2001年にスキーブーツの調整とオーダーメードのインソール製作を行う個人経営の店舗を開業。04年にBMZを創業。61歳。群馬県出身。

 ≪イチ押し!≫

 ■「フットクチュール」で最適な一枚

 高速3Dスキャナーで顧客の足型を計測、診断し、最適なインソールを提案する「BMZフットクチュール」を4月から、群馬県みなかみ町の本社近くで顧客の足の計測などを行う「猿ケ京スタジオ」などに導入した。わずか6秒で足のサイズや、ねじれ角度などを測定。測定結果を基に、インソールの材料となるカーボンの加工を自社工場で行うことで、一人一人の足に最適なインソールの製作が可能になった。外反母趾(ぼし)、足底筋膜炎など足の痛みや悩みを抱える人のほか、スポーツの成績を上げたい人にも効果的という。BMZフットクチュールを活用したオーダーメードインソールの価格は5万円(計測料は別途5000円)から。全国16カ所の取扱店でも計測やインソールの購入ができる。