EV開発、業界手探り 今後5年100車種超投入もガソリン車脅威

提供:ブルームバーグ
2016年1月、米ラスベガスで行われた家電見本市で、米ゼネラル・モーターズ(GM)の電気自動車(EV)「シボレー・ボルトEV」を発表するバーラ最高経営責任者(ブルームバーグ)

 世界の自動車メーカー各社が近い将来に直面するであろう電気自動車(EV)の需給ギャップに頭を痛めている。自動車メーカー各社は今後5年間で100車種を超えるEVを市場に投入する予定だが、消費者は当面、化石燃料車を選ぶとみられるからだ。自動車業界の幹部らは「ドライバーの好みがEVに移る」とにらむが、それが高望みに終わる可能性も捨てきれていない。

 世界シェアは1%

 英調査会社LMCオートモーティブによれば、世界の自動車販売に占めるEVのシェアは現在わずか1%。米国ではそれ未満だ。2025年まで米国では2.4%にとどまり、世界全体でも10%に届かないという。同年、米国の自動車販売の約85%がガソリン車となる見通しだ。

 米自動車大手フォード・モーターのプロダクト開発・購入グローバル責任者、ハウ・タイタン氏は「EVが広まっているという話が出るとき、注目されるのは発売されるモデルの数。実需がどうなるかは誰も分からない」と心情を明かす。

 こうした現状にもかかわらず、各社のEV開発は急ピッチで進んでいる。米ゼネラル・モーターズ(GM)は23年までにEVと燃料電池車(FCV)を合計20車種投入する計画。フォードや独フォルクスワーゲンは中国でEVの新モデルを発売する予定だ。トヨタ自動車も、20年代前半にEVを10車種以上に拡大する戦略を打ち出している。フォードのタイタン氏によれば、世界全体で今後5年間に投入されるEVは127モデル。LMCオートモーティブは米市場のみでもEVは5倍以上の75種に増えるとみる。

 LMCのジェフ・シュスター上級副社長(予測担当)は「(EV市場の成長が)実際の販売台数の伸びよりも過度に強調されている。EVはようやく台数を上げてきているとはいえ、自動車市場を席巻するにはほど遠い」と冷ややかにみる。

 野心的な目標を掲げる自動車メーカーを突き動かしているのは混乱と期待だ。EV市場の牽引(けんいん)役であるテスラやGMの株価は今年に入り高騰。フォードはテスラを生産台数や収益などで上回っているが、市場はテスラをより高く評価する。同社の株価は17年に約6割上昇し、フォードの約5%に水をあけた。EVの電池にかかるコストの減少も追い風だ。

 需要の先行きが読めない中でのEV開発競争は、自動車部品メーカーを難しい立場に追いやっている。自動車各社の動きに対応するためには、EV向け部品の開発資金や工場建設が必要となるからだ。

 例えば自動車部品北米最大手、カナダのマグナ・インターナショナルは、25年に世界の自動車販売におけるEVのシェアが3~6%にとどまるとみている。EV部品の量産体制を整えるべきか、熱心な議論が交わされているという。

 規制強化後押し?

 一方、印自動車大手マヒンドラ・アンド・マヒンドラの北米部門を率いるリック・ハース氏は、EVに楽観的な立場を取る。中国をはじめとする各国の規制強化がEVシフトを後押しすると予測しているからだ。「25年前と比べて、変化のスピードは10倍速くなっている。EVの人気に火がつけば、瞬時に業界全体がひっくり返る。勝者と敗者が生まれ、破綻する企業も出るだろう」と指摘する。

 たしかに、数多くの車種がシェアを奪いあう現状は異様に映る。だが、関係者の間では「EVの価格がガソリン車と同水準にまで下がれば、消費者のEVシフトが加速する」との見方もある。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)はその時期を遅くても29年と予測。自動車各社はその波に乗り遅れまいとしている。(ブルームバーグ Keith Naughton)