関西の企業、働き手集めに苦心 人手不足感は26年ぶりの水準、待遇改善進む

 

 関西の人手不足感が四半世紀ぶりの水準にある。ホテルや飲食などのサービス業の人手不足が目立ち、インバウンド(訪日外国人)需要の高まりに労働力が追いついていない。働き手を確保するためアルバイト・パートの平均時給も上昇傾向にあり、従業員のやりくりに企業は苦心している。

 バブル期に並ぶ

 日銀大阪支店の12月の近畿短観によると、従業員の過不足感を示す雇用人員判断指数(DI、指数過剰から不足を差し引いた値)はマイナス29で約26年前の低水準にある。来年3月予想はマイナス31で、バブル景気が終わった年とされる平成3年の11月短観時の値と並ぶ。

 総務省がまとめた近畿の11月の完全失業率は前年同月比0.4ポイント低下の2.6%と、9カ月連続で改善。10年1月に近畿の統計を取り始めて以降、最低となった。厚生労働省が集計した近畿の11月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.02ポイント上昇の1.51倍となった。

 日本総合研究所調査部の石川智久関西経済研究センター長は「宿泊や飲食、レジャー関連などのサービス業で特に人手不足感が強い」と分析。実際、企業は働かせ方や採用のやり方を変えたり、賃金を上げたりして、人手をかき集めている。

 会社が2種免取得費を負担

 ロイヤルホテルは旗艦ホテル「リーガロイヤルホテル」(大阪市北区)で今年4月から直営レストラン5店に月1回の定休日を設けた。事務などを担う間接部門のスタッフを、宴会やレストランの業務に回しても人手が足りないため、定休日を5店で異なる日とし、営業している店舗に従業員を振り替えている。

 関西国際空港や大阪ミナミ周辺などから観光バスを運行する南海バスは、運転手を確保するため採用法を変えた。従来は大型2種免許保有者を採用の対象にしていたが、免許取得費用を会社で負担して新規採用することにした。

 近鉄グループホールディングス(HD)は、採用競争の激化で採用コストがグループ各社の重荷になっていることから、アルバイト・パート、中途の採用を一元化した。今年3月にスマートフォンから応募できる求人サイトを開設。流通・サービスや駅構内業務などの採用を行っている。

 平均時給は過去最高額

 人件費は高止まりしている。リクルートジョブズの「アルバイト・パート募集時平均時給調査」によると、今年11月の三大都市圏全体の平均時給は1024円(前年同月比22円増)で、53カ月連続で前年同月比プラスとなった。関西圏は991円(同19円増)。47カ月連続で前年同月を超えた。18年1月の調査開始以来、過去最高額だ。

 ベルギービール専門レストランを展開する中井レストラン企画(大阪市中央区)はネットの求人サイトを通じて採用活動を行っている。かつては4万円ほどの採用費をかければ1人は雇えたが、いまは2.5倍の10万円ほどかかるようになったという。募集時の時給は900円台から千円台に増やした。「千円以下では電話の問い合わせさえも来ない」(中井深社長)という。

 中井社長は「来年は(採用は)もっと厳しくなる。入学シーズンに合わせてアルバイトを募集したり、スタッフに友人を紹介してもらってつないでいく」と話す。

 関西の人材、東日本へ

 人出不足感は関西と同様に全国でも強まっている。12月の全国の企業短観で、雇用人員判断指数はマイナス31(全産業全規模)で、25年ぶりの低水準となった。人手不足の長期化は、企業業績や景気の停滞を招く恐れがある。

 特に中小企業は不足感が強い。全国の中小企業(全産業)の雇用判断指数はマイナス34で、大企業のマイナス19に比べて低い水準だ。働き方改革で先行する大企業に労働者が流れている可能性がある。

 最も顕著なのはサービス業だが、同様に建設業や運輸関連も影響が大きい。関西の人材は、東日本大震災の復興事業や、東京五輪開催に向けて建設需要が拡大する東日本に奪われ、採用難に拍車がかかっている。

 「人手不足倒産」最多

 帝国データバンクによると、従業員の離職や採用を原因とする「人手不足倒産」は今年1~6月で計49件で、前年の34件を大きく上回り、平成25年の調査開始以来最多となった。

 同社の平成30年の景気見通し(29年11月調査)によると、30年の景気に悪影響を及ぼす材料について「人手不足(47.9%)」が18年11月の調査開始以来、初めて1位となった。同社産業調査部は「数年前までは余剰人員の削減が課題だったが、ここにきて状況が反転した」と指摘。人手不足は景気拡大のブレーキになりかねない。