テクノロジーで変わるオリンピック 電流で脳刺激、運動能力向上も

 
経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)の実験=東京都文京区の東京大

 頭に装着した電極に小さな電流を流して脳を刺激し、身体能力を高める手法が「脳ドーピング」として注目を集める。ジャンプ力が上がったとの報道もあり、米国では一般向けに装置が市販され人気だ。だが効果や安全性に疑問も投げかけられており、東京五輪・パラリンピックに向け対応を迫られそうだ。

 この手法は「経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)」。2つの電極を頭に貼り1ミリアンペア程度の電流を数十分流す。プラス側の脳の領域が活発になり、マイナス側では活動が抑えられるとされる。

 英科学誌ネイチャーは2016年「脳ドーピングで選手の能力が上がるかもしれない」と報じた。米民間企業はスキージャンプ選手にtDCSを実施し、しなかった選手と比べジャンプ力が13%上がったと主張する。

 この会社はヘッドホンのような形のtDCS装置を749ドル(約8万円)で販売。五輪選手も練習で使っているという。原理が単純なため、装置を自作する人も現れた。

 日本医大の大久保善朗教授(精神医学)によると、国内では「電気けいれん療法」として重度の鬱病患者に全身麻酔下で大きな電流を流す治療が行われている。小電流のものも「脳卒中後のリハビリに応用する研究が進みつつある」と話す。大久保教授は健康な男女計20人を対象に、tDCSが脳や認知機能にどんな影響を与えるのかを調べる臨床研究を、18年から始める予定だ。

 「tDCSに何らかの効果があるのは間違いない」。脳機能を研究する東京大の野崎大地教授(身体教育科学)は言い切る。個人差は大きいが、刺激後、数十分間影響が続く。ただ「長期的に副作用がないのかは分からないし、うさんくさい報告も多い。研究が必要だ」と安易な利用には警鐘を鳴らす。

 ドーピングに指定するとしてもtDCSの使用を検出する方法は今のところない。20年に向け禁止するのか、容認するのか、判断が求められる。