潜在成長力向上に供給力強化を 日本商工会議所・三村明夫会頭

 

 戦後2番目に長い高度経済成長期の「いざなぎ景気」を抜いた日本経済の2018年が始まった。ただ、足元では企業の人手不足や少子高齢化の進展など、将来への不安は拭えない。そこで経済3団体トップに成長に向けての展望などについて聞いた。

 --昨年の経済は堅調だった

 「政治と経済は車の両輪というが、昨年は米トランプ政権の誕生など政治的には未曽有なことが次々と起きた。それにもかかわらず、欧米も日本も堅調で、中国も6%超の成長で安定的だった。その上これまで世界的に金融緩和状態だったが、米国、欧州では量的緩和を縮小する方向に動いている。そうなると発展途上国経済に悪影響が出るが、そうならない不思議な状態だ。トランプ政権の対中国政策など、さまざまな政策が、当初懸念されたような破局的なものにはなっておらず、今のところ経済にはダメージを及ぼしていないからだ。また、反グローバリズムの動きがオランダやフランスの選挙ではとどまったことも大きい」

 --日本経済は

 「今年度の成長率見通しは1.9%。日本の潜在成長率が足元で1.1%にとどまっていることを考慮すると、実力以上にがんばっているのではないか。個人消費がまだ動かない中で、好調な海外需要が、日本にとってプラスに働いた。これに設備投資も動き始めたが、まだ自律的な成長路線に回帰したとはいえない。しかし、安倍晋三政権が安定政権となっていることがいい効果をもたらしている。その一方、中小企業と大企業ではまだ開きがある」

 --どういった点が

 「足元の中小企業の売上高経常利益率は3.5%で、安倍政権発足前の3.1%からは伸びたが、大企業の同時期5%から7.4%への伸びに比べれば、改善の度合いが遅い。賃上げも中小は(自社に人材を引き留めるための)防衛的なものとなっているし、原材料などのコスト増加分を取引価格に十分に転嫁できていないという企業が76%を占める。大手が過去最高益を記録する中で、中小企業との格差が懸念材料だ」

 --今年の景気をどうみるか。北朝鮮問題なども懸念されるが

 「北朝鮮や中東で(戦争などの)問題が起きてしまった場合は別として、日本の景気は長期間上昇を続けているが、高揚感もないゆっくりとした成長だ。かつて経験した景気拡大期では消費も設備投資も火がついてバブルのように拡大したが、今回は全く新しいパターンだ。さらに、昨年以来、日本経済は需給ギャップがプラスに転じている中で、今や4兆円ぐらい需要が供給力を上回っている状況の中で、生産能力をいかに引き上げるかが大きな課題になってきている。ぜひともそのためのサプライサイド強化型の政策に真剣に取り組んでほしい。安倍政権が取り組む『人づくり革命』『生産性革命』はまさに供給能力を引き上げることに着目した正しい政策だ。生産能力を上げることによって、日本の潜在成長力を高めることに重点を置く重要な年になってきた」

 --そのために必要なことは

 「日本が将来もマーケットとして有望であることを企業経営者が認識できるような環境をつくることが必要。そうすることによって国内投資が拡大する。また、家計でも将来の生活の不安がないと思えるような対策を取らなくてはならない。現在よりも、将来の方が幸せになると思えるような、現状の満足よりも将来の希望に重点を置いた政策を提示することが今年最も重要なことだ。そのためには人口減少問題への対応と、若者が将来不安を感じなくてすむような税と社会保障の一体改革が欠かせない。一部の人には痛みを伴うような改革にも取り組まなくてはならないが、安倍政権はそれを着実に進め、アベノミクスを第2ステージに引き上げるだろう」

 --中小企業にとっての課題は

 「供給能力拡大が重視される一方、中小企業の人手不足は深刻だ。そのためITやモノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)などの技術を活用しての生産性向上が重要になる。政府が中小企業100万社にIT支援することが政策パッケージに盛り込まれており、商工会議所としてもこれに協力していく。また、多くの経営者が70歳を迎える大事業承継時代に突入する中で事業承継が重要になる。起業だけでなく、優良な企業を日本に残すことも重要な成長戦略だ。まさにサプライサイドの重要な取り組みだ」

【プロフィル】三村明夫

 みむら・あきお 東大経卒。1963年富士製鉄(現新日鉄住金)入社。新日本製鉄(同)社長、会長を経て2013年から新日鉄住金相談役名誉会長。13年11月から日本商工会議所会頭。77歳。群馬県出身。