テクノロジーで変わるオリンピック AI駆使“東洋の魔女”再び

 
モニターに表示されたブレインモデルについて説明するLIGHTzの乙部信吾代表=茨城県つくば市

 さまざまなビジネスへの応用が始まっている人工知能(AI)技術や先端の脳科学研究。技術の活躍の場はスポーツ界にも広がっている。2020年の東京五輪・パラリンピックでのメダル獲得を目指し、IT企業やベンチャーの最新技術を活用して選手を支援する取り組みが活発になってきた。

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 かつて「東洋の魔女」と呼ばれ、1964年の東京五輪で金メダルを獲得した女子バレーボール日本代表。“スパルタ指導”“根性”のイメージは今は昔。バレーボールは最も緻密なデータ分析が行われるスポーツの一つだ。AIを使ったチーム強化も検討されている。

 「3SQ15,14#」。観客席でアナリストと呼ばれる分析専門家が、パソコンソフト「データバレー」に手早くデータを打ち込んでいく。1プレーを専用コードで表したもので「3番選手がゾーン1から打ったジャンプサーブを相手14番がゾーン5で返球した」という意味だ。

 代表や実業団の試合ではほぼ全てのチームで使われ、データをリアルタイムでベンチに伝達。守備位置の変更や選手交代に生かされる。昨年11月18日のプレミアリーグ女子、久光製薬対デンソー戦で、久光製薬は相手スパイクコースの配分を見て、第2セット途中から選手配置を変更していた。

 茨城県つくば市のベンチャー企業、LIGHTz(ライツ)は、代表クラスのチームでの採用を目指し、AIを使った新たなソフトの開発に取り組む。

 「ビューッと来た球をバシンと打つ」という野球の長嶋茂雄さんの言葉のように、名選手の動きの背景には独自の感覚があり、周囲には理解が及ばないこともある。トップアスリートが何を考えてどう動いているのか、知恵や経験をAIに学ばせて技術継承や試合の戦略作り、チーム強化に役立てるのが狙いだ。乙部信吾代表は「名選手の直感をAIで見える形にして残したい」と話す。

 開発に当たっては、バレー日本代表の中核として活躍した杉山祥子さんらが協力した。レシーブ一つをとっても一流選手はセッターの姿勢や自チームのブロックの位置など数多くの要素を判断材料に動く。開発チームはスパイクやブロックなどバレーの動きの判断材料となる要素を聞き取り、ブレイン(脳)モデルという独自の思考回路を作製。これをAIに組み込むことで、コートの12人の選手が自律的に動き、試合をシミュレーションするソフトを作った。

 ソフトは、パワー、テクニックなどの身体能力のほか「粘り強さ」「相手の特徴把握」など、個々の能力を入力することで実在の選手を再現できるようになっている。仮想試合を何万回と行うことで、これまで気付かなかった勝ち試合の共通点やチームの弱点が浮かび上がる可能性がある。

 開発に協力する筑波大女子バレー部の中西康己監督は「どういう指導をしたらチームがどう変わるか、分かるようになれば技術や指導の継承にもつながる。バレーボールの可能性を広げられるのではないか」と期待を込める。