パイロット不足、対策急ピッチ 航空業界、学生定員増や奨学金創設

 
授業で小学生に説明する全日空の機長=2017年10月

 日本の航空業界は「2030年問題」と呼ばれる懸念を抱えている。バブル期に大量採用した40代後半のパイロットが退職時期を迎え、旅客機を十分に飛ばせなくなるかもしれないという問題だ。専門性の高いパイロットはすぐには育てられない。手遅れとならないよう、養成機関の定員拡大や学生への奨学金制度創設など、産官学を挙げた取り組みが急ピッチで進められている。

 欠航・路線廃止も

 パイロット、客室乗務員、整備士…。昨年10月、東京都内の小学校に全日空の各スタッフが勢ぞろいした。児童は職種ごとにグループに分かれて授業を受け、荷物を預かるグランドスタッフを体験した6年生、松岡玲央君(12)は「大きさを測るのがうまくいかなかった」と悔しがった。全日空はこうした教室を20年までに全都道府県で開く。

 日航も中高生を対象に、パソコンで翼の構造をシミュレーションする講座を東大と共同で開催。担当者は「広く空の世界に興味を持ってほしい」と強調する。

 今も昔も子供の憧れの職業であるパイロット。ただ現役の年齢構成には大きな偏りがあり、現在40代後半となる世代が大きな割合を占める。航空需要の右肩上がりが続く中、この世代が30年ごろに退職時期を迎えると、深刻な人員不足に直面する恐れがある。

 17年、北海道を拠点とするAIRDO(エア・ドゥ)では、退職による機長不足で11月以降、欠航や路線廃止に陥るという事態が生じた。大手とは異なり、自社でパイロットを養成できない中堅や格安航空会社(LCC)にとって、もはや人員不足は待ったなしの問題だ。

 年齢制限引き上げ

 現在年間計300人程度の国内各社の採用数は、30年ごろには400人規模に拡大する必要があるとされる。これに対応しようと、18年度、国立の航空大学校(本校宮崎市)は定員を1.5倍の108人に拡大、私立でも工学院大(東京)が養成専攻を新設する。

 パイロットの卵への経済面での支援も。2000万円以上とされる重い学費の負担を考慮し、私立大など6つの民間養成機関の学生に、1人当たり500万円を貸与する奨学金制度が18年度スタートする。保証料の一部を負担するのは全日空グループと日航だ。

 即戦力のベテラン世代への期待も大きい。国は15年にパイロットの年齢制限を64歳から67歳に引き上げ、定年(日航や全日空は60歳)後に再雇用されたり、LCCなどに再就職したりして操縦桿(かん)を握り続ける60代も目立つようになってきた。

 国土交通省乗員政策室は「いろんな部分に手を打って裾野を広げ、全体的に底上げすることが重要だ」と強調した。

【用語解説】航空会社のパイロット

 乗務への第一歩として「事業用操縦士」などのライセンスが不可欠となる。国立の航空大学校、東海大や法政大といった私立大、専門学校、訓練事業会社で取得できるほか、大手の日航や全日空は、採用後に取得させる自社養成も実施している。さらに訓練を続け、副操縦士になると初めて乗務できる。機長に昇格するには「定期運送用操縦士」の資格取得や国土交通相による認定が必要となる。